深く多面的に、考える。

甦る中心市街地 #05

中心市街地の現在地と未来 池田宜永・都城市長が語るビジョン

テーマ「甦る中心市街地」。最終回は、中心市街地活性化の立役者でもある都城市の池田宜永市長に、現状の評価や、今後の展望などを伺いました。

一番、うれしいと思うこと

—— 市長に就任してから取り組んでこられた中心市街地の活性化策が一定の成果を出しています。中核施設「Mallmall(読み方はまるまる)」が2018(平成30)年4月に開館してから5年が経ち、来場者数は延べ750万人を超えました。なにを最もうれしく感じますか?

「Mallmall」の5年間を振り返る都城市の池田宜永市長

池田宜永(たかひさ)市長(以下、池田) 中心市街地の再開発において、いろいろな先生がたと議論するなかで大事にしていたコンセプトの一つが「憩いの場」だったんですね。

用事がなくても何気なく図書館に来るとか、雨が降っているけれども、ふらっとあの辺に来るとか、何かイベントをしているかもしれないから来てみたとか。新しい中心市街地が、そういった憩いの場になりつつあるとすれば、これは一番うれしいことですね。

「Mallmall」の大きな屋根の下は訪れる市民の「憩いの場」でもある

—— Mallmallの核とも言える新しい図書館は、開館当初から多くの人を呼びました。開館初年度となる2018年度の来館者は、事前の年間予想を4倍以上も上回る110万人を突破しています。

池田 出来上がった図書館を最初に見たとき、「え、なんだここは」と思いました。

旧都城大丸のショッピングモールをリノベーションし、斬新な図書館が生まれた

池田 想定を超えてきたと言いますか、いい意味でのギャップがありました。中に入ると、異空間というか、言葉は悪いですけれど、およそ都城らしくない。

私ですらそう感じたので、市民の方はもっと驚かれたと思うんですね。特に最初の頃は、そういった驚きやギャップが求心力となり、想定を超えるMallmallの集客力につながったのではないかと思っています。

—— Mallmall全体の来場者数は、2018年度に延べ189.7万人、2019年度に同195万人と推移しましたが、2020年度からはコロナ禍の影響をもろに受けました。

池田 さすがに、緊急事態宣言のときはMallmallも閉館せざるを得なかったので、大きな影響を受けました。それでも、最もまちなかから人が消えた2020年度、図書館だけで年間延べ約55万人、Mallmall全体では約73万人もの方がいらしてくれたんですね。

中心市街地中核施設「Mallmall」来場者数の推移

注1:Mallmallを構成する図書館、ぷれぴか、保健センター、未来創造ステーション、まちなか交流センター、まちなか広場中央、バス待合所の来場者数累計
注2:2023年度は4月1日〜5月10日の実績値。数字は四捨五入

池田 直近の2022年度は、Mallmall全体の来場者数が延べ165万人まで回復しており、2023年度はさらにそれを上回る勢いで推移しています。

そういった実績を見ると、市民の皆さんにとって中心市街地が、「ふらっと行きたくなる憩いの場」になってきてくれているのかなと感じます。

“箱づくり”の最初からかかわってほしい

—— Mallmallの中核を成す図書館は、木目と黒を基調とした洗練された上質な雰囲気で、機能的なレイアウトや仕掛けも施されています。図書館へリノベーションするというのは市長のアイデアですが、デザインや内装なども市長が指示したのでしょうか?

池田 いやいや。あんなに斬新な図書館ができたのは、民間の「指定管理者」のおかげです。

ただし、通常は、図書館という“箱”をつくってから、管理運営をしてくださる指定管理者を公募して選定するのですが、我々は、箱をつくる段階から指定管理者の方々と一緒にやってきたんですね。その方法がよかったのかもしれません。

都城市が図書館に採用した「VE・O・C 方式」
旧都城大丸のセンターモールの建物を利用し、図書館へと全面改装しようと決めた都城市は、そのリノベーションにあたって、「図書館備品調達等業務」「管理運営業務(指定管理業務)」「カフェ運営業務」をパッケージにし、公募型プロポーザルで提案を受け、委託事業者を選定する「VE・O・C 方式」を実施した。

図書館の施設整備と同時に、図書館のスペシャリストである指定管理業務の委託事業者(指定管理者)を選定。館内のレイアウトや家具・備品の調達などへ関与してもらい、「価値工学(VE:Value Engineering)を行ってもらうことで、コストパフォーマンスに優れた空間の高質化を実現した。

リノベーションのプロセスに最初から指定管理者に関与してもらうことで、開業後の指定管理業務(O:Operation)の円滑化も図れる。加えて、図書館併設のカフェ(C:Cafe)の整備・管理運営も同時に実施してもらうことで、空間の一体感や、集客効果も見込める方式である。

プロポーザルの結果、従来の図書館にはなかった「ストーリー性」のある優れた提案を示した「MAL コンソーシアム(株式会社マナビノタネ、コクヨマーケティング株式会社、株式会社ヴィアックスで構成)」を指定管理者として選定した。

池田 図書館の管理運営を任せる指定管理者というのは、全国津々浦々の図書館を見ていて、いろいろな知恵や知識がある、いわば図書館のスペシャリストです。

箱をつくってから指定管理者を決めるとなると、要はそういったプロの方々の意見が反映しづらくなるので、それは嫌だなと。その世界のプロが指定管理を受ける前提で、箱づくりの最初からかかわってほしい、という思いがあったので、そういう方式を採りました。

これがうまくいったので、2023年4月にオープンしたばかりの新しい「道の駅 都城NiQLL(ニクル)」も、今、整備をしている関之尾公園の施設も、同じ方式を採用しています。

リニューアルオープンが大きな話題となった「道の駅 都城NiQLL(ニクル)」

商業施設への思い

—— 中心市街地再開発について、池田市長は当初から「商業施設ではなく非商業施設を中心に」という考えがあり、図書館と子育て支援施設、広場を中核施設に据えました。一方で隣接する敷地の再開発は民間に委託し、Mallmallの隣にホテルなどが入る複合施設の「TERRASTA(テラスタ)」が2022年4月にオープンしました。市や市長はどの程度、関与されたのでしょうか?

池田 Mallmallのほうは官がやり、隣接する敷地は民でと役割分担をした結果、民間の思いでホテルを中心とするテラスタがつくられたわけですが、じゃあ、私の思いと違うかというと必ずしもそうではなくて、それはそれでよかったと思っていまして。

市との関係で言うと、まずうちからお願いしたのは「スーパーマーケット」だったんです。

シティホテルが入る複合施設「TERRASTA(テラスタ)」。広場に面した1階にスーパーマーケットがある

池田 というのは、あの辺に住んでいらっしゃる方にとって、旧都城大丸のデパ地下はスーパーの役割を果たしていたのですが、それがなくなったことによって、都城のまちなかで買い物難民が生まれる、という状況になってしまった。

これは、我々、市として大きな課題でした。だから、民間に再開発を委託するにあたって、「スーパーを設ける」というのを必須要件にせざるを得ませんでした。それ以外にどういう商業施設とマッチングするかというのは民間に委ねたのですが、今、やっていただいているところの提案がホテルだったと。これには、民間側の強い思いがあるわけです。

東京や大阪などから取引先の方をお呼びするとき、シティホテルに泊まりたいという方々がいらっしゃるけれども、残念ながら都城にはシティホテルがないということで、都城で仕事を終えると宮崎市内まで戻って宿泊する、という方も多かったようです。

都城の経営者からすると、歯がゆい思いをしていたようで、それで、ああいう都城にはない、ビジネスホテルとは一線を画したシティホテルができました。

既存のビジネスホテルとは客層が競合しないということで、地域経済に配慮したところもあると聞いています。私個人としても、それはすばらしい配慮だと、思いました。

—— Mallmallとテラスタの開発は官と民、別々で行ったにもかかわらず、テラスタの雰囲気は図書館に合っていますし、全体が溶け合っている印象です。

池田 我々からの要望として、できれば全体の統一感を意識してもらいたいとはお伝えしました。それも踏まえてご配慮いただけたということだと思います。「まちなか広場」と一体に見えるテラスタのテラスの設計など、すごく考えていただけたなと感謝しております。

—— 非商業施設のMallmallはたくさんの人を中心市街地に呼ぶことに成功しました。商業施設のテラスタも、Mallmallとの相乗効果で一定の成果を出しています。一方で、その周辺の商店街の再生はまだ道半ばです。

池田 中心市街地が昔のように商業施設や商店街によって復活できるかというと、現実としてそれは厳しいだろう、という思いが市長就任の当初からありました。ただ、商業施設が必要ない、商店街の再生は諦めている、というわけではありません。

まずは、非商業施設によって人を呼ぶ。ふたたび中心市街地に集まった人々によって、周辺の商業施設や商店街も活性化する。そうなっていってほしいし、そうなるんじゃないかという期待もしていました。

実際に、タウンマネージャーの二宮(啓市)さんたちの頑張りもあって、小洒落たお店や人気の飲食店がMallmallの周辺に増えてきていますし、まちなか全体に人が戻りつつある。空き店舗も減ってきています。

シャッター商店街、再生の兆し タウンマネージャーの奮闘

中心市街地に住んでもらう

—— この先の活性化策についてもお話を伺いたいと思います。コロナ禍の影響はかなり大きかったと思いますが、ようやく落ち着きを見せてきました。ここから景色がまただいぶ変わるのではないでしょうか。

池田 そうですね。変わるし、変えたいと思っています。先ほどの商店街の再生も続いていきますし、もう一つ、ちょうど今、強化して取り組んでいる施策にも期待を寄せています。

それは、中心市街地に住んでいただくための「居住推進」です。人が住めば生活をします。スーパーのお客さんも増えますし、夜も飲食店に足を運ぼうとなるじゃないですか。住人が増えれば、それだけ中心市街地の商業にプラスの効果を与えるはずです。

そもそも、中心市街地って昔から“中心”で、上下水道などのインフラも整っている。中心市街地はちゃんとしているエリアなので、マンションなどの集合住宅にも向いているということで、今、居住推進の政策も進めているわけです。

中心市街地の「居住推進政策」
中心市街地の居住推進政策は、Mallmallがオープンしてから約2年後、コロナ禍が始まった2020(令和2)年から始まった。

中心市街地の定住人口増加に向けた「中心市街地居住推進事業」を策定。共同住宅の建築費および既存建物の解体費に対する支援策(補助金の拠出)を展開した。その結果、2020年度に185戸だった対象エリア内のマンションストック(築10年以内)は2022年度、310戸まで増えている。

さらに2022(令和4)年からは、公有地を活用した共同住宅整備にも乗り出す。明道小北駐車場を活用した民間共同住宅整備について公募型プロポーザルを実施。2025(令和7)年に約30室の共同住宅が完成する予定だ。

—— 2020年度から、マンションやアパートなど中心市街地における共同住宅の支援策を打ち出しています。

池田 当初、いい反応があったんですけれど、ちょうどコロナ禍と重なってしまいました。この2年くらいは我慢の時期だったんですけれど、それでも動きはあったので、ここからさらに期待ができると思っています。

—— どのくらい増やしたいと思っていますか?

池田 建てていただけるのであれば、どれだけでも建てていただきたいと思っていますし、中心市街地であっても、人が住んでおられない空き家・廃屋もたくさんあります。まちの景観上、どうなのかなという思いもありますし、廃屋よりはまだ駐車場や更地のほうがいいとも思います。

ましてや、そこにマンションやアパートを建てていただけるのであれば、景観上もよく、また、中心市街地の人口増につながりますし、人の流れも増えてお金も回るので、本当にありがたい。支援策への申請も、いくらでも来ていただければと思っています。

市民が誇れる中心市街地に

池田 それから、結果として今、タイミングが合ったんですけれど、物件をつくる支援策に加えて、そこに住もうと考えてくれる方への支援策も加わりました。とにかく都城の人口を10年後に増加に転じさせるべく、これまで以上に舵を切って、今年度(2023年度)から「人口減少対策」を強化し、強力に打ち出したところです。

2023年度から強化した「人口減少対策」
都城市は2023年4月から、「10年後に人口増加へ!」という目標を掲げ、これまで以上に力を入れて人口減少対策の各種施策を推進している。

今回の人口減少対策強化は、「子育て支援」と「移住応援給付金」の2本柱。

子育て支援は、「第1子からの『保育料』の完全無料化」「中学生までの『医療費』の完全無料化」「『妊産婦の健診費用』の完全無料化」という、3つの完全無料化に踏み切った。

また、移住応援給付金は、日本トップレベルの給付金を用意した。全国どこから(三股町・曽於市・志布志市を除く)移住しても、1世帯あたり100~300万円の基礎給付金に加え、1子あたり100万円の子ども加算を設定。例えば夫婦と2人の子どもで移住した場合、最大500万円が支給される。

池田 子育て支援にせよ、移住応援給付金にせよ、当然ながら都城全体が対象なのですが、子育ての環境もいいし、都城へ移住しようかと考えてくださる方々のなかには、中心市街地を候補に考えてくださる方もいらっしゃると思います。今回の強化は、そうした方々の背中を押すことにもつながるはずです。

—— 行政施設から始まった中心市街地活性化策ですが、続いて商業施設ができ、商店街の活性も進み、居住促進も始まりました。最終的にはこうなってほしい、という池田市長なりのビジョンをお聞かせください。

池田 先ほどから申し上げているように、商業施設を核とした復活はなかなか難しいと思ってきたなかで、中心市街地にああいう行政施設ができました。そこを中心に、市民の憩いの場にもなりつつある。呼応するように商店街も変わりつつありますし、今後は住んでくれる人も増えることも期待しています。

商業エリアや居住エリアとしてのウエートも高まってくるなかで、週末に多くの人々が気持ちよさそうに歩いて、忙しそうに働いていて、賑わっているような空気感が定着する、というのが一つの目指す形なのかなと思っています。

それから、市民の皆さんが市外や県外の友人・知人・親戚に誇れるような中心市街地になってくれたら、と願っています。市民の方が、ほかの地域の人に「うちの図書館、いいんだよ」と言ってくれているというのを耳にすることもあります。やっぱり、うれしいですよね。

中心市街地で商売をする人、働く人、住む人、訪れる人、あらゆる市民が一緒になって、本気で中心市街地をもっと活性化していきましょうよ。そして、もっと市民が誇れる中心市街地にしていきましょうと。そう、皆さんに呼びかけていきたいと思っています。

もっと市民が誇れる中心市街地に、と呼びかけを続ける

次回に続く)

街に新風吹き込む“高級”焼き鳥店 「とり喜多」店主、北薗泰信氏の願い

  • 筆者
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井上 理(いのうえ・おさむ)

フリーランス記者・編集者/Renews代表。1999年慶應義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。「日経ビジネス」編集部などを経て、2010年日本経済新聞に出向。2018年4月日経BPを退職。フリーランス記者として独立し、Renews設立。著書に『任天堂 “驚き”を生む方程式(日本経済出版社)』『BUZZ革命(文藝春秋)』。

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