深く多面的に、考える。

都城で輝く女性たち #01

「ジェンダーギャップ」の現在地 男女格差、全国から九州・宮崎まで

新テーマ「都城の輝く女性たち」では、ジェンダーギャップ(男女格差)をものともせず、力強く輝く女性たちにフォーカスします。導入編となる初回は日本、そして九州や宮崎県の女性が置かれている状況を客観的なデータで理解していきます。

先進国で最低レベルの男女格差

「日本のジェンダーギャップ(男女格差)、先進国で最低レベル」――。幾度、この文言を目にしただろうか。

2022(令和4)年7月、世界経済フォーラム(World Economic Forum=WEF)は世界各国のGender Gap Index(ジェンダーギャップ指数)」を公表。日本の総合順位は調査対象の世界146カ国中116位と、“例年並み”の結果となった。

世界経済フォーラム(World Economic Forum=WEF)はウェブサイトで世界各国の「Gender Gap Index(ジェンダーギャップ指数)」を公開している

2021年が156カ国中120位、2020年は153カ国中121位。先進国最下位で、アジアでは韓国や中国、ASEAN諸国より低い。好転の兆しは見えない。

WEFの調査を分野別に見ると「政治」が特に深刻で、日本は139位だった。

スイス・ジュネーヴに本部を置く多国間政治組織「列国議会同盟(IPU)」が各国議会における女性比率を調査している。二院制の場合は下院で比較。このランキングに照らすと日本の下院にあたる衆議院の女性議員比率は9.9%で164位。OECD諸国で最も低く、世界平均の26.5%を大きく下回っている。

WEFジェンダーギャップ指数の分野別では「経済」も厳しい結果に。日本は121位で前年の117位からスコアと順位を下げた。詳細な指標では「管理職の女性割合」の低さが際立つ。

「経済」分野における日本の男女格差(WEFジェンダーギャップ指数2022)
指標 スコア 順位
女性の労働参加率 0.75 83位/146カ国
同一労働の賃金格差 0.642 76位/146カ国
収入の格差 0.566 100位/146カ国
管理職の女性割合 0.152 130位/146カ国
注:出所は、世界経済フォーラム(WEF)「Gender Gap Index(ジェンダーギャップ指数)」。スコアは「1」に近いほど男女格差がない

政府の「男女共同参画白書(令和4年版)」によると、日本の就業者に占める女性比率は44.7%で、諸外国と大きな差はない。一方で、管理職に占める女性比率は、諸外国では概ね30%以上のところ、日本は13.2%とかなり低い。

東京など都市部も含めた国全体でこうならば、地方はどうなのだろうか。

九州地方は全国ワースト3位

2022年1月、WEFの指数を参考にした「九州ジェンダーギャップ指数」というものが公表された。調査したのは約1000社が加盟する九州経済連合会(九経連)。西日本鉄道の倉富純男会長が会長を務め、13人いる副会長にはふくおかフィナンシャルグループ会長、宮崎銀行頭取、九州電力会長、九州旅客鉄道会長など錚々たる顔ぶれが並ぶ。

そのすべてが男性だ。「九州男児」という言葉に代表されるように、九州には男性優位のイメージがある。そこで、あえて九州におけるジェンダーギャップの現状を「見える化」すべく、独自に地域別の男女格差を調査した。

結果は、九州地方が全国11地域中ワースト3位。下に東海地方と北海道地方が続いた。項目別では、政治が足を引っ張った。

「九州ジェンダーギャップ指数」のランキング
経済 教育 健康 政治 総合
沖縄地方 1 1 3 3 1
南関東地方 7 5 8 1 2
北陸地方 2 9 4 4 3
四国地方 6 2 5 8 4
中国地方 5 3 10 7 5
近畿地方 8 6 7 2 6
北関東・甲信地方 9 4 1 5 7
東北地方 3 8 6 9 8
九州地方 4 7 9 10 9
東海地方 11 10 2 6 10
北海道地方 10 11 11 11 11
出所:一般社団法人 九州経済連合会

では、九州のなかでも宮崎県にフォーカスして見ると、どうなのだろうか。

宮崎県は政治指数が全国最下位に

2023年3月8日、上智大学法学部の三浦まり教授が監修し、共同通信社が事務局を務める「地域からジェンダー平等研究会」は国際女性デーに合わせ、「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」の最新版を公表した。

こちらも、本家のWEFの指標を参考にした独自調査で、「政治」「行政」「教育」「経済」の4分野における指数を都道府県別に分析している。九経連の調査と同様、特に政治分野が深刻だ。

宮崎県には女性の国会議員、市町村町がおらず、女性知事もまだ誕生していない。加えて、女性がゼロの議会が前回調査から約2割増えたことから、宮崎県は政治の指数で2023年、前年の全国40位から順位を落とし最下位となった。

そのほかも、行政分野が前年37位から42位へダウン。教育分野は前年46位から37位と若干改善したものの低調。全体として振るわなかった。

2022年版では、宮崎県の講評として以下の記述があった。

県の大卒程度職員採用、管理職登用には格差があり、行政は37位に。教育は小中高校の校長や教頭、県教育委員会事務局の管理職の女性割合が低いといった課題があり、46位にとどまりました。

本県男女格差浮き彫り 『教育』『政治』『行政』低迷」「重要ポスト女性不在 『ガラスの天井』根強く」「6割が目標未達成 第3次みやざき男女共同参画プラン」……。

2022年の調査結果にぶら下がる宮崎日日新聞の関連記事のタイトルが現状を物語る。

女性が多いのに格差がある

令和4年版の男女共同参画白書によると「女性議員」の割合が最も多いのは東京23区などの「特別区議会(30.7%)」。「政令指定都市の市議会」「市議会全体」と続き、「都道府県議会(11.8%)」と「町村議会(11.7%)」がワーストを争う。地方や郡部へ行くほど女性比率は下がる。

宮崎県議会議員の顔ぶれを見ると、37人中女性はわずか3人。率にして8.1%にとどまり、町村議会の平均をも下回っている。たまたま今が低いわけではない。過去10年間、ずっと都道府県議会の全国平均を下回ったままだ。

宮崎県職員の管理職に占める女性比率も、2021年4月時点で全国平均11.8%を下回る7%にとどまる。諸外国に比べれば全国平均も相当に低いが、10年前の2012年比で5.3ポイント増と増加傾向にはある。対して宮崎県は同2.1ポイント増。全国平均との差は広がっている。

県職員の管理職に占める女性割合

注:出所は県生活・協働・男女参画課。各年4月1日現在。「課長級以上」には知事部局のほか、人事委員会事務局、労働委員会事務局、監査事務局、議会事務局、企業局、警察本部を含む。

宮崎県は女性が多いにもかかわらず、全国平均より大きな格差が存在し、埋まらない。

宮崎県は、歴史的に人口に対する女性比率が高い。「令和3年度版宮崎県男女共同参画の現状と施策」によると、宮崎県の「人口性比(女性100人に対する男性の数)」は89.4であり、全国の94.7と比較しても高い。世代別では、「20~24歳」「30歳~54歳」について、全国では男性が女性の人口を上回っている。だが、宮崎県では女性のほうが多い。

都城市出身で、都市部で起業したある女性は、「私見」としてこう話す。

「“島津の血”が流れすぎているからなのか、宮崎はなかなか女性が一旗あげるような雰囲気ではない。出たいと思っても出られずに燻っている女性もいっぱいいると思う」

だが一方で、朗報もある。

女性の社会進出が比較的進んでいる

先に示した、都道府県版ジェンダー・ギャップ指数の経済分野では、宮崎県は2022年、6位と好調だった。

2023年は、「フルタイムの仕事に従事する男女間の賃金格差(37位)」「企業や法人の役員・管理職の男女比(29位)」等が足を引っ張り23位へと順位を落としたが、「共働き家庭の家事育児などに使用する時間の男女格差(9位)」「フルタイムで働く人の男女比(13位)」など、依然として好調な要素もある。

宮崎県内の生産年齢人口(15~64歳)で女性の就業率は増加傾向にあり、特に子育て世代にあたる25~44歳の就業率は全国に比べて高い水準で推移している。

男性の意識も九州内で開きがある。内閣府が2015年に実施した意識調査で、「一般に夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」と思うかと尋ねたところ、「そう思う」「ややそう思う」と答えた男性の比率が全国で最も多かったのは福岡県だった。一方、「妻は家庭を守るべき」と答えた宮崎県の男性の比率は全国で30位だった。

これを、「共働きへの理解がある」と捉えるのか、はたまた、男性の稼ぎが低いため「経済的な理由から女性も働かざるを得ない」と捉えるのか。いずれにせよ、「女性の社会進出が比較的進んでいる」ということは言えるだろう。

さらに、都城市に限れば、政治や行政の面で男女格差が大きい、とは言えない。

都城市議会議員の26人中、女性は7人で約27%。全国の市議会全体の16.8%を大幅に上回っている。都城市職員の女性管理職比率も2022年4月時点で20.4%とかなり高い。「2025年度末までに20%」としていた目標値をすでにクリアしている。

逆境はある。しかしそれを跳ね返し、輝いている女性はたくさんいる。次回以降、そんな女性の生き方や価値観を深掘りしていく。

次回に続く)

デザインで都城を支える女性集団 フジタカデザイン社長・藤高未紗さん

  • 筆者
  • 筆者の新着記事
井上 理(いのうえ・おさむ)

フリーランス記者・編集者/Renews代表。1999年慶應義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。「日経ビジネス」編集部などを経て、2010年日本経済新聞に出向。2018年4月日経BPを退職。フリーランス記者として独立し、Renews設立。著書に『任天堂 “驚き”を生む方程式(日本経済出版社)』『BUZZ革命(文藝春秋)』。

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