プラス1920人、13年ぶりの人口増
「“3710人”というのは、私からするとかなり想定を超える数字だったので、正直びっくりしました」――。
2023年度、都城市の移住者数は「3710人」に達した。その率直な印象を聞くと、池田宜永(たかひさ)市長はこう口にした。
2024(令和6)年4月25日、都城市から人口に関する驚きの数字が発表された。同年4月1日時点の推計人口が前年同月比1920人増の15万9474人となり、2011(平成23)年度以来13年ぶりに人口増へ転じたのだ。
宮崎県内の26市町村で昨年同期と比べて人口が増えたのは都城市だけ。都城市は2023年度当初予算で、「10年後の人口増加」を目指して大胆な人口減少対策の政策を打ち出したが、わずか1年でその目標を達成したことになる。
13年ぶりの人口増をもたらしたのは、移住者数の大躍進。2023年度、市の窓口を通じた移住者数は前年度の約8.5倍にあたる3710人(1663世帯)と衝撃的な数字だった。
人口の動き(人口動態)は、転入と転出の差「社会動態(増減)」と、出生と死亡の差「自然動態(増減)」の合計で決まる。基本的に地方自治体では、都市部への転出が避けられず「社会“減”」となり、亡くなる人の数を出生数が上回ることもなく「自然“減”」となる。
地方ではこのダブルのマイナス効果が人口減を加速させているのだが、2023年度、都城市の人口動態は大きく様相を変えた。
2021年度 | 22年度 | 23年度 | |
---|---|---|---|
自然動態 (出生-死亡) |
1080人減 (1208人- 2288人) |
1335人減 (1203人- 2538人) |
1291人減 (1100人- 2391人) |
社会動態 (転入-転出) |
184人減 (5301人- 5485人) |
484人増 (6462人- 5978人) |
3211人増 (9140人- 5929人) |
人口増減 | 1264人減 | 851人減 | 1920人増 |
2023年度、都城市からの転出者数は前年度並みの「5929人」と横ばいだったが、転入者数は前年度より41.4%多い「9140人」と大きく伸長。差分の社会増減が「3211人増」となった。それが自然増減の「1291人減」を上回り、差し引き「1920人増」という人口増へと転じた。当然、3710人の移住者の効果が大きい。
池田市長も驚くほどのインパクト。今回から始まる新テーマ「人口減に克つ」では、市にとっても想定外の結果を生んだ「人口減少対策」の深層を追っていく。
1年で86万人も減った日本人
少子高齢化にともなう人口減――。東京や大阪などの一部市区を除き、全国ほとんどの地方自治体が抱える難問だ。
2024(令和6)年7月に総務省から発表された「住民基本台帳に基づく人口動態調査」によると、外国人を除く「日本人」の人口は2024年1月1日時点で1億2156万人。1年前に比べて86万人減った。15年連続の減少で、減少数・減少率は調査を始めた1968(昭和43)年以降、最大となった。
減少のほとんどは、自然減。23年中の日本人の死亡者数は157万9727人と調査開始以来、最多となる一方で、出生者数の72万9367人は最小に。テレビや新聞などのマスメディアは、改めて浮き彫りとなった人口減の実態を大きく報じた。
2023年中、都道府県別で日本人の人口が増えたのは東京都のみ。宮崎県は1万128人が減り、その減少率は大分県と同率で47都道府県中17番目に高かった。
人口減の勢いは止まらない。
国立社会保障・人口問題研究所が2023年12月に公表した「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」によると、2050年、宮崎県全体の人口は100万人を大きく割り、2020年比で25.5%減の79万6631人に。宮崎市は同13.1%減と人口減を何とか食い止めているものの、26市町村中3割にあたる8市町村で人口が2020年の約半数、もしくは半数以下に落ち込む予測となっている。
2020年実績 | 2050年予測 | |
---|---|---|
全国 | 1億2614万人 | 1億468万人 (17%減) |
宮崎県 | 106万9576人 | 79万6631人 (25.5%減) |
都城市 | 16万640人 | 12万4930人 (22.2%減) |
都城市は半数とまではいかないが22.2%減。2050年時点で3万5710人を失い、人口が12万4930人になるという予測が出ていた。
これに危機感を抱いた都城市は2023年度、大きく動き出した。人口減少対策を政策の真ん中に据え、全国トップクラスの「移住応援給付金」を用意したのである。
「もっと広く、わかりやすく、使いやすく!」
まだ、世の中が新型コロナウイルスに翻弄されていた2022年、都城市の人口動態は宮崎県の中でも比較的、良いほうだった。
2022年度、転入者数から転出者数を引いた宮崎県全体の社会増減は「746人減」だったが、都城市の社会増減は前年度の184人減からプラスに転じ「484人増」となった。2022年度、市の移住窓口を通じた都城市への移住者は435人と、過去最高に達しており、その効果が社会増への転換につながった。
コロナ禍の影響もあるだろうが、「ふるさと納税日本一」の自治体として名を馳せた効果も多分にある。
都城市は2014(平成26)年にふるさと納税をリニューアルし、「対外的PR戦略」の武器として活用し始めた。結果、2014年から9年連続で寄附金額がトップ10に入り、2015、16、20年には度重なる1位を記録。市の知名度やブランドイメージを高め、全国に知らしめた。
幸いにして、2022年度のふるさと納税の寄附金額も約196億円に達し、結果として2年ぶりの全国1位に返り咲くことに(23年度も連続で全国1位を獲得)。この、ふるさと納税の勢いに加え、社会増へ転換しそうだという兆候も見えていた。
その“流れ”を敏感に察知した池田市長は2022年秋、人口減少を食い止める新たな政策の準備を職員に指示。その一つが、独自財源を使った大胆な移住応援給付金の創設である。
「全国から人を呼ぶには、どれくらいの給付金があるといいのか、シミュレーションしてほしい」。池田市長からオファーを受けたのは、当時、人口減少対策を担っていた総合政策部総合政策課。現・人口減少対策課の満永昌孝主幹は、こう振り返る。
「給付金や対象をどうするか、当時は小さな数字から刻むようなかたちで検討していました。そのたびに市長から『これで、どれだけ効果があると思っているんだ!本気で考えてくれ!』『もっと広く、わかりやすく、使いやすく!』と指示があったことを覚えています」
国や県の移住支援制度を大幅拡張
じつは、東京から地方への移住者は、ほとんどの自治体で移住支援金がもらえる。政府が2019(令和元)年度から「地方創生移住支援事業」を開始しているからだ。
東京23区の在住者、あるいは「東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)」から東京23区への通勤者が、東京圏以外、もしくは離島や山間部など東京圏の条件不利地域へ移住した場合、単身で最大「60万円」、世帯は最大「100万円」が支給されるというもの。18歳未満の子どもを帯同すれば、2023年度から子一人あたり「100万円」が加算される。
国が財源を確保するため、約8割の地方自治体が同事業に参加。内閣府地方創生推進事務局によると、コロナ禍で地方移住が進んだ2022年度、同事業の支援件数は全国で2495件(移住人数は5108人)、2023年度は3542件(同7782人)だった。
これとは別に、宮崎県は移住前の居住地要件を「東京圏(埼玉県・千葉県・東京都23区以外・神奈川県)」「名古屋圏(岐阜県・愛知県・三重県)」「大阪圏(京都府・大阪府・兵庫県・奈良県)」「福岡県」に広げた県独自の移住支援金を用意。単身者への支給額が最大「30万円」という点以外は、東京23区の在住者・通勤者を対象とした国の制度と同額だ。
都城市は、これら国や県の移住支援制度を大きく拡張。2023年2月、翌4月の新年度から独自の移住支援制度を開始すると発表した。
移住前の居住地要件は「全国どこでも」。正確には近隣の3️市町(宮崎県三股町・鹿児島県曽於市・志布志市)以外からであればどこでも可とし、さらに給付金を大幅に増額した。
国の制度 | 県の制度 | 都城市の制度 | |
---|---|---|---|
基礎給付 | 単身60万円 世帯100万円 |
単身30万円 世帯100万円 |
単身100万円 世帯200万円 |
子ども 加算 |
一人100万円 | 一人100万円 | 一人100万円 |
中山間 地域加算 |
― | ― | 単身100万円 世帯100万円 |
移住前の 居住地 |
東京23区 | 東京圏、名古屋圏、大阪圏、福岡県 | 全国どこでも |
基礎給付額は単身「100万円」、世帯「200万円」と国の約1.7〜2倍に引き上げ、移住先が中山間地域の場合は「100万円」を加算。子ども加算額は、国や県の制度と同じく一人「100万円」とした。たとえば、両親と子2人が中山間地域に移住した場合、国や県の制度だと「300万円」のところ、都城市の独自制度では「500万円」となる。
条件の幅広さや給付金額は全国トップクラスに。この思い切った施策がのちに、大きなインパクトを生むことになる。
想定を超える展開、3月の“駆け込み”
都城市は2023年度、強力な移住支援制度の開始にあわせて、人口減少対策を総合的・一体的に推進するための組織改編も行っている。
総合政策部に「人口減少対策課」を新設し、同課内に「移住・定住推進室」を設置。伴い、市役所内に開設していた「移住・定住サポートセンター」を同室に移設した上で、2023年4月からの移住者を出迎えた。
人口減少対策課のゴールは「10年後の人口増加」。この数年、都城市の自然減は1000〜1300人減という水準。ということは、1300〜1500人程度の社会増があれば人口増に転じることができる。給付金があってもいきなり1500人は無理。まずは「年間600人」の移住者数を目標に掲げたが、蓋を開けると良い意味で予想を裏切る展開となった。
2023年7月末時点の移住者数は「439人」。わずか4カ月で前年度の実績である435人を超えたのだ。5カ月目の翌8月には年間目標の600人を突破したことから、人口減少対策課は年度途中で目標を2倍の「1200人」へ上方修正。しかし、それをも軽く超えていく。
10カ月目の2024年1月末時点の年間累計移住者数は「1833人」。もはや、この段階で完全に想定を超えていたが、2023年度の最後、3月にとんでもない人数が積み増された。その数、「1475人」。2023年4〜12月の9カ月分に相当する規模の移住者が、3月に集中した。
この莫大な駆け込み移住者を誘った要因はなにか。一つは、移住者の急増を踏まえ、制度の見直しが予定されたことが挙げられる。
2023年度が終わる直前の2月、池田市長は定例会見で、想定を超える移住者が訪れたことから翌年度の給付金制度を見直すと発表。2024年度は、基礎給付を国や県と同じ額に引き下げ、中山間地域での居住加算は「1人20万円(上限100万円)」とし、1人100万円の子ども加算は上限を「300万円」とした。
両親と子2人が中山間地域に移住した場合、500万円もらえた給付金が翌年度は「380万円」に減額されるとあって、2023年度中の移住へと背中を押された人や家族もいるだろう。
しかし、3月に移住者が集中した理由は、ほかにもある。そして、給付金の存在やその額だけが都城市に大量の移住者を呼び込んだわけでもない。
3月に移住者が偏った理由を、前出の人口減少対策課の満永主幹は「転職や転校のタイミングを考えて、移住は3月にするという方も多かった」と話す。つまり、早い段階で都城への移住を決めていたが、家庭の事情で3月を待った人や家族が多かったということだ。
さらに、年度末にかけて尻上がりに移住者数が伸びた理由として、満永主幹はこう指摘する。「年度後半の急増は、“FNN”と“Yahoo!ニュース”の影響が大きいと考えています」――。
“バズ”った「Yahoo!ニュース」
都城市は2023年度、独自の移住支援制度を開始するとともに、移住に関するPR戦略も強化。移住・定住の特設サイト「住めば住むほど都城」を開設したほか、7月には人気キャラクター「ふなっしー」を起用した本格的なプロモーションも実施した。
7月13日には、東京都内でPRイベントを開催。池田市長がふなっしーに特別住民票を交付し、仮想の移住支援給付金を手渡した。テレビなど多くのメディアにも取り上げられ、これはこれで大きな反響や効果があったのだが、それを上回る効果が10月にあった。都城市の移住政策を報じるニュース記事が「Yahoo!ニュース」に掲載されたのだ。
もとはUMKテレビ宮崎の「大胆な移住政策で都城市への移住者が急増している」というニュースが発端。そのテキスト版がFNN系列の「FNNプライムオンライン」に転載され、さらにそれがYahoo!ニュースに転載されて、SNSなどで拡散されたという。移住政策のプロモーションなどを担当する人口減少対策課の新坂斉士副主幹は、こう驚きを隠さない。
「全国的に“バズ”って、問い合わせがものすごく増えた。1週間くらいは電話も鳴り続けました。移住支援制度そのものがニュースになったことで、全国の移住検討層に直接届いたためか、ふなっしーのプロモーションを上回る反響があった」
市の窓口への「移住相談件数」は、ふなっしーのキャンペーンを開始した7月以降、徐々に右肩上がりとなっていったが、10月、前月比2倍以上の「930件」と突出した。
市にとっては青天の霹靂。しかも、仕掛けたキャンペーンやイベントではなく、都城市の移住政策を淡々と伝えるニュースがきっかけであり、それが歴史的な移住者を生むことに大きく影響した。そう、市は見ている。
「移住を検討されている方って、いるところにはいる。全国にたくさんいると思いますが、その方々に気づいてもらい、響かないとダメ。今回はたまたま、都城市という選択肢がうまく響いた」と満永主幹。では、なにが響いたのか。
もちろん全国トップクラスの給付金額も一つの要素だが、それだけで人は動かない。大量の移住者を呼び込んだ大きな要因として市は「手厚い子育て支援」の存在を重視している。
移住検討層に響いた「子育て支援」
「若い方々が移住してきているということは、『3つの完全無料化』などの負担軽減が大きいんだと思います」――。
2023年度の移住者が3710人に達し、13年ぶりの人口増へ転じたことを発表した2024年4月25日の定例記者会見で、池田市長はこう発言した。
先立って公開した記事で、移住支援の強化と同時に走らせていた「子育て支援」の強化について詳しく紹介した。10年後の人口増加を見据え、自然増を促すべく、「保育料の完全無料化」を始めとする「3つの完全無料化」を実施。これが、移住検討層にも響き、移住者や社会増を押し上げる要因にもなった、というわけだ。
バズったUMKテレビ宮崎のニュースも子育て支援にフォーカス。冒頭、埼玉・東松山市から都城市に移住してきた子育て世帯を紹介し、「子育て支援だったり、そういったものが充実していたので、それがきっかけで移住してきました」という声を伝えていた。
移住者が子育て支援を重視していることは、移住者の横顔からもうかがい知ることができる。市によると、2023年度に移住した1663世帯のうち、世帯主が30歳代以下の世帯は62.5%。40歳代以下では83.1%と、比較的若い世帯に偏っている。
また、18歳未満の子どもは全国平均では人口の14%だが、3710人の移住者では36%にあたる1336人。うち、0〜5歳の未就学児はじつに53.4%の713人もいる。さらにその約6割、子どもの31.1%にあたる416人は「0〜2歳児」だ。
国平均だと、18歳未満の子どものうち0〜2歳児の比率は8.9%。都城への移住者ではその3.5倍も0〜2歳児が存在するということになる。
都城市の子育て支援強化は、0〜2歳児の保育料無料化が柱となっている。中学生までの医療費も完全無料化となった。つまり、それらの政策が移住にも好影響を与えたのではないか、という推測が成り立つ。
移住検討層に響いたと思われる要素は、ほかにもある。
移住検討層に響いた「地縁」「医療」「学校」
正確な統計は取っていないが、移住制度に必須の「移住相談登録フォーム」に入力してもらう際、都城市の移住政策を知ったきっかけを複数回答で聞いている。それによると、約5割が「親・知人からの紹介」と回答しているという。
「肌感にはなりますが……」と前置いた上で、満永主幹はこう話す。「高齢の親を気にされていたり、もともと地元に帰ろうかなと思っていたりした方々の『Uターン』を促した側面はだいぶあるのかなと。やっぱり、全く見ず知らずというわけではなく、何らかの地縁がある方に響いているという印象はあります」。
さらに、移住相談登録フォームのアンケート記述欄で目立つのが、「医療」や「学校」に関する言及だという。
「いわゆる医療移住と教育移住という側面もあると思います。アンケートや直接の相談などでよく見受けたり耳にしたりするのは、『都城は病院と学校が多いので安心』ということ。都城は16万人都市なので、地方や田舎らしさを持ちつつ、それなりの都市機能もある。そのあたりを評価いただけたと思います」
都城市は妊娠・出産期の周産期医療において、全国でもトップクラスの体制と実績を誇る。市内の産院は5つあり、独立行政法人国立病院機構「都城医療センター(旧国立都城病院)」が2次医療センターとして緊急対応を担う。加えて、「都城市郡医師会病院」と「藤元総合病院」が市民の医療を総合的に支えるなど、医療環境が充実している。
満永主幹は「4割くらいが医療を評価して移住してくれた印象」とし、続いて新坂副主幹はこう補足した。
「東京などでの移住相談会でよく聞かれるのは、総合病院の数。医療って優先順位1位ではないけれど、気にする方は多い。どなたにとっても、移住するきっかけの1つにはなっているのだろうなと思います」
教育関連施設では、認可保育所・認定こども園等が市内に87施設。小学校が37、中学校が20、高校が8と続く。「『地方に移住したいけれど、高校が1つしかないのはちょっと』という方にも、都城はちょうどよくフィットする規模感」(満永主幹)だ。
そのほかの要素を聞き出していると、新坂副主幹がおもしろい話をしてくれた。「最近、多いなと思うのは『サーフィン移住』。都城市は海がないんですけれど、宮崎や鹿児島、熊本の海まで車で1時間前後もあれば行ける距離。いろんなサーフポイントに行きやすいというのがサーファーにとっては魅力的なようです」。
「奪い合い」か「貢献」か
移住支援強化策を打ち出しても、それが移住検討層に伝わらなければ意味はない。伝わったとして、住環境が見合ったものでなければ人は移住を決めることはない。
都城には、移住したいと思わせるいろいろな要素が揃っていた。そこに、手厚い移住応援給付金の制度が登場したことで、背中を押された人が多かった。それが、3710人もの移住者を呼び、13年ぶりの人口増を実現した真相と言える。
それにしても、インパクトが大きかった。
「手厚い給付金が人口の奪い合いにつながっているという批判もある」「県内からの移住、これをどう評価するのか、たしかに難しいところ」……。都城市の人口増を報じた新聞やテレビなどのメディアは、こう釘をさしていた。
こうした見方に対し池田市長は、2024年4月の定例会見で「県外から6割の方に来ていただいているということは、これは宮崎県全体にとっては人口減の緩和に相当、効いていると思っています。県全体としては悪い話ではない。両面をぜひ、捉えていただけると大変、ありがたいなと思います」と語っていた。
2021年度 | 22年度 | 23年度 | |
---|---|---|---|
自然動態 (出生-死亡) |
7299人減 (7544人- 1万4843人) |
9602人減 (7048人- 1万6650人) |
9516人減 (6398人- 1万5914人) |
社会動態 (転入-転出) |
2448人減 (1万8115人- 2万563人) |
746人減 (2万982人- 2万1728人) |
74人増 (2万1665人- 2万1591人) |
人口増減 | 9747人減 | 1万348人減 | 9442人減 |
都城市に移住した1663世帯のうち、県外からの移住者は「992世帯(59.7%)」。2023年度、宮崎県全体の人口動態は、前年度の「1万348人減」から「9442人減」へと906人分、改善した。変化の内訳は自然動態(増減)が「86人」の改善で、社会動態(増減)が「820人」の改善。ここに都城市への移住効果が貢献しているのは明らかだ。
ただし、結果として「増やしすぎた」という側面は否めない。そして、1663世帯中、約4割が県内からの移住であることも事実。2023年度、転出者数が増加したことから社会増減のマイナス幅を伸ばした県内自治体もあり、都城市による移住政策の影響がうかがえる。
移住支援制度の給付金額を引き下げたのは、それもあっての判断なのだろう。
2024年度もトレンドを維持
それでも、ある程度の移住効果が今後も続くと見られる。
移住応援給付金を減額したと言っても、前居住地などの条件はなお国・県よりも幅広い。中山間地域への加算も残り、金額的にも好条件であることに違いはない。
今回のインパクトによって「移住と言えば都城」というイメージが定着したことで、移住マーケットにおける“先行者利益”を得られるかもしれない。
実際、2024年4〜6月にかけて、都城市の人口動態は急激な悪化を見せてはいない。
勢いは落ちたものの、7月1日時点で4月1日時点よりさらに「105人」の人口増。年度末、ふたたび人口減に転落する可能性もあるが、下げ幅が2022年度以前より縮小するのは間違いないだろう。
市の魅力で、どこまで伸ばすことができるか。そして、どう「定住」につなげ、増えた人口を維持できるか。新たな挑戦が待っている。
次回、人口減少対策にかける思いや、結果に対する率直な印象、そして「なぜ今なのか」というタイミングなど、“ここでしか読めない”池田市長のインタビューを余すところなくお伝えします。