深く多面的に、考える。

子育てにやさしいまち #02

周産期医療で都城が先⾏する理由 中山産婦人科医院・中山院長の理解

  • 都城の周産期死亡率を劇的に下げた「分娩時医療情報ネットワークシステム」。
  • 全国初のシステム導入が成功した背景には、まちの産科の理解と協力があった。
  • もともと備わっていた風通しの良さや都城市の規模感といった土壌も奏功した。

中山産婦人科医院にもあの“画面”

都城市の中心市街地から車で3分ほど北上した場所に、鎌倉時代からの歴史を伝える「島津荘総鎮守 神柱宮」がある。その近隣に「中山産婦人科医院」はあった。今は市内5施設となった産婦人科医院の一つだ。

1962(昭和37)年開業と伝統ある同医院は、1992(平成4)年に新館を増築。中山郁男院長が2代目として父から継いだ。「病室を広く」という先代の方針に基づいて、18ある病室はすべて広めの個室に。食事もカフェやホテルのようなクオリティを目指し、妊婦に寄り添っている。

2020(令和2)〜22年、中山産婦人科の分娩取扱数は675件(うち帝王切開は209件)。都城で産まれた赤ちゃんの約2割が、ここで産声を上げたことになる。診察時間の終了後、翌日に手術を控えるなか、中山院長が院内を案内してくれた。

都城医療センターほどではないが、それでも院内の至るところに、あの“画面”がある。胎児や母体の情報を医療施設がリアルタイムで共有する全国初の「分娩時医療情報ネットワークシステム」。そこにつながったパソコンの画面である。

「分娩時医療情報ネットワークシステム」の“画面”。波形上段が胎児心拍数図、下段が母体の陣痛図。経時的な変化から異常を見極める

「このボタンを押すと、胎児心拍数などのモニタリング情報が都城医療センターに飛ぶんです。今は分娩直前の患者さんはいないので共有していませんが、明日は帝王切開の方がいるので共有します」

通常は共有先として「都城医療センター」にチェックを付け、設定ボタンを押す

そう言って、中山院長はパソコンの画面を閉じた。共有するボタンを押す、という作業は造作もない。しかし、それが医師によってはいかに“重い”ことであるか……。

一次医療施設の理解と協力が不可欠なネットワークシステム。その深淵を探った。

周産期死亡率を改善させたシステム

テーマ「子育てに優しいまち」の初回記事「全国トップクラスの周産期医療 都城医療センターにつながる命の波形」で、宮崎大学医学部を中心とする周産期医療改革の道程を紹介した。

都城保健所管内では「周産期(妊娠22週から出生後7日未満)」に死亡する胎児や新生児の割合「周産期死亡率」が安定せず低迷していたが、まちの産院(一次医療施設)と都城医療センター(二次)、宮崎大学医学部(三次)が胎児や母体の情報をリアルタイムで共有できるシステムの導入により、劇的に改善。全国トップクラスへと上り詰めた。

都城保健所管内の周産期死亡率の推移

出所:厚生労働省「人口動態統計月報」、及び宮崎県「衛生統計年報」
注:「都城管内」は都城市と三股町の合算。1994年の数値は都城市のみ

共有する情報は「CTGモニタリング」と呼ばれる。CTGとは、一次医療施設側の分娩監視装置によって得られる、胎児の心拍数や母体の陣痛(子宮収縮)を記録した「胎児心拍数陣痛図」の略称。その情報を測定時、リアルタイムで二次・三次医療施設と共有できる。

医療関係者向け「胎児心拍数陣痛図(CTG)」の事例集。この胎児は機能不全の診断で帝王切開となった

「分娩時医療情報ネットワークシステム」とは
医療施設をインターネット回線で結び、胎児や母体の情報をリアルタイムで共有できるシステム。産婦人科医院など市中の一次医療施設において、「分娩監視装置」から得られる情報をリアルタイムで送信。共有する情報は基本、胎児の心拍数や母体の陣痛(子宮収縮)を経時的に測定する「胎児心拍数陣痛図(CTG)」。その測定を「CTGモニタリング」と呼ぶ。つまり、分娩時医療情報ネットワークシステムは遠隔地でのCTGモニタリングの共有を可能にしたもの。

一次医療施設で保存していた過去のデータも送信可能で、二次医療施設の地域周産期母子医療センターや、三次医療施設の大学病院などでモニタリングを確認できる。2012年に都城圏域の医療施設が初導入。2017年以降、宮崎県内にも導入が広がった。

分娩監視装置の機種によっては母体の心拍数も共有できるほか、陣痛を伴わない時点でも注意が必要な際は、CTGとほぼ同様の情報を得られる「ノンストレステスト(NST)」のモニタリング情報を送信することもある。 

しかし、12年経った今でもまだ、周産期死亡率を下げる“切り札”の分娩時医療情報ネットワークシステムは全国的に普及しておらず、都城での事例は珍しいという。

なぜ都城ではうまくいっているのか。なぜ全国に先駆けて成功できたのか。その答えは、一次医療施設にある。場面を再び中山産婦人科医院に戻そう。

「躊躇せずバンバン飛ばしている」

冒頭で中山院長が教えてくれたように、一次医療施設側がボタンを押さない限り、胎児や母体のモニタリング情報が都城医療センターに共有されることはない。システムは無用の長物と化する。では、どんなシーンで情報を“飛ばして”いるのだろうか。中山院長はこう答えた。

中山産婦人科医院の中山郁男(なかやま・いくお)院長
1982年福岡大学医学部医学科卒業後、同部産婦人科へ入局。1985年宮崎医科大学産婦人科入局、87年日本産婦人科学会産婦人科専門医。1992年中山産婦人科医院に入職。父の後を継ぎ2代目院長として、地域の女性の健康に寄り添う

「まず、妊婦さんが分娩室に入ったら無条件で飛ぶように設定しています。入院部屋で分娩監視装置をかけた時でも、見ていて『あれおかしいぞ』となったり、看護師が気づいて『送信しなくていいんですか』となったりしたら、躊躇せずにバンバン飛ばします」

分娩室に入った、あるいは帝王切開の手術が始まった際から、自動的に胎児や母体のモニタリング情報が都城医療センターに送信される。陣痛前でも、CTGと同様の情報を得られる「ノンストレステスト(NST)」の検査で心配があると思えば、モニタリングを共有し、医療センターの医師にも見てもらうのだという。

ただし、これは中山産婦人科医院に限った話だ。中山院長は続ける。

「飛ばす件数が多いか少ないは病院によって分かれてきます。うちはなんでもかんでも最初は飛ばしていましたが、すべてを送信していたら受ける側はパンクしてしまいます。ですから今は、ある程度絞って飛ばすようにしていますが、それでも多いほうだと思います」

中山院長のような判断や使い方は、全国的には“異例”と見たほうがいい。

モニタリング共有の「壁」

胎児や母体の異変にいち早く気づくためには、モニタリング情報の分析が欠かせない。情報を収集する分娩監視装置には、胎児の心拍数を測る「モニター(センサー装置)」と、母体の陣痛圧を測るモニターが、それぞれ2本のケーブルでつながれている。スイッチを入れると、胎児の心拍と陣痛の波形が印字され、機種によっては画面にも映し出される。

「分娩監視装置(上)」からつながる2本の「モニター(センサー装置)」を妊婦に装着し、CTGを計測する

しかし、それだけでは分娩時医療情報ネットワークシステムを活用したことにならない。

このモニタリングは送るか否か。共有ボタンを押すか否か――。判断はあくまで、一次医療施設側に委ねられている。ゆえに中山院長が言うように、病院によって送信件数や頻度が異なってくるというわけだ。

都城医療センター内の各所で、一次医療施設側から共有されるCTGモニタリングの情報が確認できる

プライバシーに配慮し、二次医療施設などへ共有されるモニタリング情報は「ストリーミング送信」となっている。つまり二次施設側は、一次施設側が意図的に送信状態にした時しか閲覧できず、情報のダウンロードや保存もできない。データは一次施設にのみ保存されており、過去の記録を呼び出すことも可能だが、その送信も一次施設だけが許される。二次施設側が動画サイト「YouTube」のように勝手に見に行くことはできない。

それでも、この一次医療施設側の「共有」という行為にアレルギーがあるという。情報を受ける二次医療施設、都城医療センター産婦人科医の古田賢医長はこう話す。

独立行政法人国立病院機構 都城医療センター 産婦人科の古田賢(ふるた・けん)医長
宮崎西高等学校卒業後、宮崎医科大学医学部に進学。1999年卒業後、同大産婦人科に入局。池ノ上教授らに師事し、日本各地で周産期母子医療センターの立ち上げに携わる。2016年都城医療センターの産婦人科医長に就任

「自分の患者さんのモニタリングを外部の医療機関に共有することに対して、後ろ向きの開業医さんは、まだ多いと思います。医療の現場は、例えば手術中の動画を常に見せてくれと言ったら、やっぱりちょっといい気はしないよね、という世界」

「要は、自分の“城”でやっている医療に物言いを付けられたくない、地域の大病院や大学病院の医師にちゃちゃを入れられたくない、と感じる開業医の先生は多いと思うんですよね。それは、周産期だけじゃなくて、循環器にしても何にしても、同じだと思います」

プライバシーに配慮した設計とは言え、外部に送信する以上、多少なりとも不安は残る。もし不測の事態が起きれば、医療訴訟などの種を漏らすことにもなり得る。ゆえに、共有への反発が生じることもある。しかし、中山院長のシステムへの“理解”は違う。

中山院長が共有する理由

なぜ、躊躇なく共有するのか。忌避されがちな、手の内を晒すようなことを積極的にやれるのか。その問いに中山院長は「僕は自分のためです」と即答し、こう続けた。

「やっぱり、モニタリング情報を読んでいて、どう決断したらいいか迷う例があるんですよね。それが、オンラインで共有して(都城医療センターと)ツーカーになっていると、電話しながらここはどうだ、どうすると、ほぼリアルタイムで相談ができる。これは大きい」

「モニタリングの結果をあとからFAXで送って、お互いに紙を見ながら電話していた時代とは大違い。実感として、新生児の蘇生などの危険な状態が、ほとんどないというほど減りました」

何もない平時でも「見られている」ことへの抵抗感はないのだろうか。

というのも、モニタリングの共有時、都城医療センター側から「大丈夫ですか?」と電話が来ることもある。2023年12月も1件、都城医療センターから中山産婦人科医院へ連絡があった。その時は、すでに中山産婦人科医院側も異変に気づいており、「ちょうど今、帝王切開の準備中ですので、大丈夫です」と返答した。こうした連絡を中山院長は厭わず、感謝すらしている。

「うちの看護師や助産師は、そんな気にせんで良かがっていうことでも『大丈夫ですか?』とポンポン上げてくる。それだけ、一生懸命モニタリング情報を見ている。まして、医療センターに飛ばしていれば、向こうの医師や看護師のチェックもダブル、トリプルで入るわけです。もっと見落としが少なくなる。それは、ありがたいと思います」

異変の見落としが“バレる”リスクなど気にも止めない。見せないほうが、むしろリスクは高まるという認識なのだ。

患者に納得してもらうツール

「僕らはこういう理由で帝王切開に踏み切ったほうがいいと思います」「危ないので都城医療センターに移りましょう」「都城医療センターにいる先生にも共有していて、同じ意見をもらいました」――。

そう伝えることによって、患者の納得感や安心感が高まる効果もあると中山院長は指摘する。「医療センターと相談して下した判断です、と患者さんにお伝えできるのも大きい。共有システムは患者さんに納得してもらうための大きなツールでもあるんです」。

それは、対看護師でも同じだ。稀に、モニタリング情報を見た看護師や助産師から「先生、本当に大丈夫なんですか?」と詰め寄られることもある。

そんな折、「いや、モニタリングを見ている医療センターの先生も同じ所見だから大丈夫だよ」と看護師に言うと、納得してくれるという。「同じことを説明しても、説得力が違うんですよね。看護師に対しても患者さんに対しても」。中山院長はそう言って笑う。

中山院長は都城の一次医療施設の中でも、最もネットワークシステムの導入に前向きだった一人。ただ、「ほかの地域で見られるような強い反発はなかった」と明かす。

「都城の中で、積極的に(情報を)送る施設と、たまにしか送らない施設と、濃淡があったのは事実」としながら、「モニタリングを飛ばしていたほうが産まれた時の赤ちゃんの状態が良い、ということが臍帯(さいたい)血動脈の分析でも実証された。それもあって、みんな次第に飛ばしていくようになった」と話す。

共有へのアレルギーはシステムの導入時に最も露見する。都城では、当時6カ所あった産婦人科施設と3カ所あった助産院のすべてがネットワークシステムを一斉導入した。システムの導入に同意する時点で、ある程度、共有にポジティブだという証左。はなから送信ボタンを押す気がないのであれば、導入も受け入れないだろう。

つまり、都城の一次医療施設は、システム導入に最初から理解があった。自らの医療を“見られる”ことへの抵抗感が少なかった。これが、都城での導入が成功した1つ目の理由だ。では、なぜ理解があったのか。

都城医療センターと開業医の信頼関係

2017年9月の「広報 都城」に掲載された周産期医療の特集にヒントがある。当時の都城医療センター産婦人科の徳永修一医長(現・古賀総合病院産婦人科)は、こう語っている。

都城は産婦人科医同士がアドバイスを聞く耳を持ち、信頼関係があったことが、システムを導入できた理由ではないでしょうか。全国初のシステムは、他県でも導入の動きがありますが、うまくいかないところもあると思います。

徳永前医長が言う信頼関係とは、都城医療センター産婦人科と、都城の産婦人科開業医との信頼関係と言って差し支えない。

より高度な医療を施す二次医療施設は産婦人科に限らず、一次医療施設から患者が搬送されて来る際に「なぜ送ってくるのか」としつこく尋ねるケースが多いという。聞くこと自体は、より重篤な患者にリソースを確保しておくため、あるいは患者の情報を詳細に得るために、決して悪いことではない。

ただ、市中の一次医療施設の医師からすれば責め立てられているように映り、一次と二次の関係性が悪化することも多い。結果として、一次からの搬送数が減っている地域もある。だが、都城は逆だったと中山院長は証言する。

「もともと、都城医療センターの産婦人科は、鹿児島大学の医局出身の先生が診ておられた。その時代から『普通分娩はできるだけ開業医が診てくれ』と。その代わり、『(開業医が)患者を送ってきたら断りません』と。そういう方針でずっときているので、我々、開業医が医療センターの先生に相談しやすい関係性が歴史的にあったということです」

宮崎大学と開業医の「風通し」

2008(平成20)年頃を境に、鹿児島大学が都城医療センター産婦人科から撤退。2010年頃から、完全に宮崎大学の医師だけの体制に移行してからも、その関係性は薄れず強化された。

前回記事で紹介したように、宮崎県の周産期医療改革は、1991年に宮崎大学医学部産婦人科教授に就任した池ノ上克(つよむ)氏を中心に行われた。

医学部長などを経て学長に就任した池ノ上氏は、2021年に学長を退任するまで、そのキャリアを通して県の周産期死亡率を下げることに尽力。都城を皮切りとしたネットワークシステムの導入も、池ノ上氏の旗振りによるものだ。

宮崎大学の医局出身で、同じく宮大出身の徳永前医長から都城医療センターの産婦人科を継いだ古田医長は、こう説明する。

都城医療センターの古田医長は「もともと開業医との風通しは良かった」と話す

「池ノ上先生から、『二次は開業医からの搬送をできるだけウェルカムでお受けしなさい』とずっと言われて続けてきました。それは宮崎大学全体の方針であり、先代の徳永先生も含め、とにかく我々に染み付いていて、ただただ実践してきた」

「その結果、都城医療センターと周辺開業医との良好な関係は続いて、両者の風通しもさらに良くなっていった。だから、池ノ上先生が宮崎県内に分娩時医療情報ネットワークシステムを築こうと考えた時、まず都城から入れようという話になったんだと思います」

つまり、もともと都城の一次医療施設と都城医療センターのあいだに信頼関係があり、風通しも良かったため、システム導入への理解が進んだ。これが2つ目の成功要因と言える。

こうした歴史的な関係性に加えて、地理的な特性も特筆すべき成功要因だろう。

程良い規模感とシンプルな構成

かつて都城圏域では、都城医療センターに加え、中心市街地にある「藤元総合病院」も周産期医療の二次機能を担っていた。

周産期母子医療の連携(「広報 都城」より)

2008(平成20)年4月には、都城医療センターと藤元総合病院が「地域周産期母子医療センター」の指定を国から受け、周産期医療体制が確立。そこへ2012年、分娩時医療情報ネットワークシステムの構築が始まり、市内すべての産婦人科医院・助産院と、二次の藤元総合病院・都城医療センターにもシステムが導入された。

ところが2015年、諸事情から藤元総合病院が周産期医療から撤退することになり、都城圏域の二次医療施設は都城医療センターのみとなる。

これを機に、それまでローリスクの妊婦も受け入れていた都城医療センターは、唯一の二次として、ハイリスク因子がある患者しか受け入れない方針とした。宮崎大学から派遣される産婦人科医も3人から5人へと増員され、結果として、三次の宮崎大学との関係もより強固となった。

宮崎大学を頂点とするピラミッド型の連携は現状、一次が5施設、二次と三次は1施設というシンプルな構成。「学閥や派閥争いなどの面倒なことは起きようもない」と中山院長は話す。

「もともと、都城医療センターには、鹿児島大学から宮崎大学に置き換わっていっても学閥争いなんていうものはなかった。我々開業医同士も、都城医療センターとのあいだも、土地がらなのかわかりませんが、いがみ合うようなことはない。ほかの地域では対立や反発があると聞きますが、ここは対立するほどの数がないということでしょうか」

人口約16万人の都城市。その程よい規模感とシンプルな構成が、信頼関係や風通しの良さに影響しているのは間違いない。つつがなく利活用できる「土壌」が都城にはあったということだ。

AIによる判定補助に期待

一次医療施設側の理解、風通しの良さやまちの規模感といった土壌。そうした要素が分娩時医療情報ネットワークシステムの導入と利活用につながり、都城における周産期医療のレベルを大きく底上げした。

風通しは良けれども、危険な胎児や母体のモニタリング情報をうまく共有できていなかった。そこに、システムが絶妙にマッチしたということだ。

システム導入から12年が経とうとしている。2017年にはシステム全体の更新がなされ、二次医療施設の医師は、一次医療施設から共有されたモニタリング情報をスマートフォンでも確認できるようになった。この先、どう進化を遂げていくのか。

都城医療センターの古田医長は「人工知能(AI)」に期待を寄せる。「モニタリング情報の波形を読み、パターンを正しく判定するには勉強と経験が必要。でも、そこにAIが補助として、過去のパターンから危険なアラートを出すような機能が加われば、リスクに対してより敏感になれて、より安全なお産につながるかもしれません」。

一方で、分娩時医療情報ネットワークシステムの他地域への普及について、古田医長は「大都市ではまだちょっと難しい」と話す。中山院長も「このネットワークシステムは、もっと全国に広がって良さそうだと思いますが、大学病院を複数抱えるような都市部では、調整がなかなか難しい」とし、こう提案する。

「逆に言うと、沖縄など離島を抱えているところ、あるいは大学病院を一つしか抱えていない地方県のほうがやりやすいと思うので、そういうところから広がっていけばと願います。医者がなんぼ頑張っても限界がある。普段、モニタリング情報を良く見ているのは看護師や助産師さん。彼ら彼女らのレベルアップも一緒にやりながら、モニタリング情報がいろんな医療関係者の目に触れるようにしていかないと、周産期医療は良くならない」

システムはあくまで道具であり、それを使いこなすのは人間。医療関係者の理解や思いがいかに重要かということを、都城のストーリーは教えてくれる。

中山院長は言う。「ゴールはなるべく多くの幼き命を救うこと」。その思いは本来、全国どの地域であっても皆、同じはずだ。

 

中山産婦人科医院
住所 宮崎県都城市前田町17街区32号
電話番号 0986-23-8815
外来受付 9:00~12:00、14:00~17:00
休診日 土曜午後・日曜・祝日
公式 中山産婦人科医院

受付時間・休診日は変更となる場合がございますので、ご来院前にご確認ください。

  • 筆者
  • 筆者の新着記事
井上 理(いのうえ・おさむ)

フリーランス記者・編集者/Renews代表。1999年慶應義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。「日経ビジネス」編集部などを経て、2010年日本経済新聞に出向。2018年4月日経BPを退職。フリーランス記者として独立し、Renews設立。著書に『任天堂 “驚き”を生む方程式(日本経済出版社)』『BUZZ革命(文藝春秋)』。

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