深く多面的に、考える。

都城志布志道路の深層 #06

冷凍餃子の雄、都城立地の勝算 「大阪王将」イートアンド九州進出

  • 都城インター工業団地に2026年、もう一つの“食の拠点”が誕生。
  • 冷凍餃子シェア1位のイートアンドグループが九州工場を設立。
  • 西日本エリアの需要を賄う戦略的進出。その舞台裏を深掘りした。

冷凍餃子のシェア1位の企業立地

2024(令和6)年10月、また一つ、都城市で大型の立地協定締結式が行われた。

イートアンドホールディングスの仲田浩康社長(右)と都城市の池田宜永市長(左)。仲田社長は食品事業を担うグループ傘下のイートアンドフーズ社長も兼ねる(イートアンド提供、以下同)

池田宜永(たかひさ)市長と並んで協定書を掲げるのは、前回記事の児湯食鳥と同じく、都城を“成長の地”として捉えた企業のトップ。イートアンドホールディングス(以下、イートアンド)の仲田浩康社長である。

イートアンドは「大阪王将」を始めとする飲食店を全国に474店舗(2025年11月時点、加盟店含む)展開する飲食大手。同時に、「大阪王将羽根つき餃子」「大阪王将ぷるもち水餃子」を始めとする冷凍食品などを全国で市販する食品大手でもある。

冷凍餃子シェア1位を誇る「大阪王将羽根つき餃子」(上)と「大阪王将ぷるもち水餃子」(下)

水餃子を含む市販向け冷凍餃子のシェアは1位。今や食品事業はグループ売上高の57%を占める。その屋台骨を担うグループ傘下のイートアンドフーズが都城への企業立地を決めた。

名称は「九州工場」。場所は「都城インター工業団地」の桜木地区にある8259平方メートル(㎡)の区画だ。

「都城インター工業団地」の桜木地区に「九州工場」の建設を進めている

2025(令和7)年9月から66億円を投じて建設を開始しており、2026年12月に新工場が完成する見込み。およそ270人を新規雇用し、本格稼働後には年間約2万tの商品を製造する予定。これによりイートアンド全体の製造能力の約25%、4分の1程度を担い、九州を含む西日本エリアの中核拠点としていく考えだ。

九州工場で製造する商品の2〜3割程度は九州エリア向けとなる見通し。残りは関西を含む西日本全域に市販品、生協用として流通していく。

これまで主に群馬県にある「関東工場」と大阪府にある「関西工場」が製造を支えてきたが、関東工場に次ぐ規模の主力工場として九州工場の計画が持ち上がった。

大阪・枚方市にあるイートアンドの関西工場

なぜ、都城を選んだのか。それには複合的な理由がある。

課題となった西日本、襲ったコロナ禍

冷凍餃子シェア1位を獲得するまで急成長を遂げたイートアンドは、成長とともに悩みを抱えていた。

もとは発祥の地である大阪の枚方市にある関西工場が基盤だった。だが、比較的都心部の立地で拡張は難しい。

そこで2012年、群馬県に大阪王将の店舗・市販向け冷凍食品を作る大型の関東工場を建設。次いで2019年と2023年には第二工場と第三工場を隣接地に増設し、3工場で全体の4分の3の生産を担うまで規模が拡大した。

イートアンドの関東工場。右から第一工場、第二工場、第三工場と連なっている

「今、西日本や九州で販売している商品も、関東の工場で作ったものを運んできています。『2024年問題』や物流費高騰もあり、これは立地を見直さないといけないと、2018年くらいから仲田(浩康)社長と構想を立てていました」

イートアンドの生産担当役員(常務取締役)でもある、イートアンドフーズの山本浩 取締役専務執行役員はこう語る。

東日本は関東工場で賄える。西日本の生産をどう強化すべきか。検討を重ねていた最中に新型コロナウイルスが襲った。

「道頓堀のお店の売り上げが1日数千円の時もあり、コロナ禍の時は会社が倒産するのではと思うくらいでした。反面、冷凍食品はむちゃくちゃ売れたんです。とにかく急いで工場を増設しようとなって、2023年1月に関東第三工場を建てました」

西日本エリアの需要を吸収する新工場の構想は、いったん、スピード優先で見送らざるを得なかった。

餃子の原材料の一大調達地である南九州

それでも依然として課題は残った。

関東第三工場で増産しても、なお需要は伸び続け、2023年にはシェア1位を獲得。群馬から大量の餃子を西日本に輸送していた。

消費地である関西圏に新たな工場を設けるのか、それとも……。コロナ禍も落ち着き、本格的に西日本エリアの生産強化を検討し始めた時、すでにイートアンドの視野に、都城インター工業団地が入っていた。

まず、南九州は餃子の原材料であるキャベツや豚肉などの主力調達先。とりわけ、都城市、鹿児島県曽於市、同大崎町など都城志布志道路の恩恵を享受できる地域との関係は深かったと山本取締役は話す。

イートアンドホールディングスの山本浩 常務取締役(生産担当)。食品事業を担うイートアンドフーズの取締役専務執行役員も兼ねる

「20年近く前、2007年頃から都城の農業生産法人さんとタッグを組んでキャベツの供給をしてもらっています。その後、国産食材を振興していく取り組みを始めた時、パートナーになっていただいた会社の1つが都城市の太陽ファームさん。にんにく、生姜、白菜、あとはニラなど、都城を中心とした南九州の農産物を手がけていただきました」

「ほかにも産地はたくさんありますが、やっぱり調達先として一番パイプが太く、最も我々を支えていただいているのは、都城を中心とした宮崎、鹿児島の皆さん。南九州からの調達は全体の半分近くはあるんじゃないですかね」

そうした主力の調達地で新工場を建て、消費地へ輸送したほうがいいのか。はたまた、大阪などの消費地近くまで原材料を輸送して製造した方がいいのか――。

西日本エリアの生産強化の指針は揺れたが、試算を重ねた結果、前者のメリットが大きいと判断。ターゲットは都城の工業団地に絞られた。

一度は見送った工業団地との「縁」

じつは、都城インター工業団地で新区画が分譲されるとあって、以前から都城に目をつけ、市と協議も続けていた。

2021〜2022年に分譲申込受付けがあった桜木地区も検討したが、先述の通り、コロナ禍における内食需要の急増に即応するため、関東工場の増設で見送った経緯がある。

しかし一転、光明が差した。山本取締役はこう経緯を説明する。

「関東工場の増産が落ち着いた頃、都城ではすでに受付が終了していました。次の分譲はだいぶ先になるだろうとのことで、引き続きよろしくお願いしますね、なんて言っていたら、その後に偶然、空きが出ました。二次公募というか補選があって、めでたくそこで入れていただくことができたんです」

都城市、曽於市、志布志市を縦断する都城志布志道路(都城市のパンフレットから)

ほかの地域も比較検討の俎上にあがった。しかし、都城インター工業団地は原材料の調達先と最も近い。製造拠点として考えると最適な立地。なにより2025年に都城志布志道路の全線開通を控えていた。その沿線で「原料の供給がほぼ完結する」(山本取締役)。

しかも一度は見送った経緯がありながら、ふたたびチャンスが訪れるという「縁」もある。かくしてイートアンドは都城インター工業団地への企業立地を決めた。

都城インター工業団地のメリットは、ほかにもある。地の利を生かした「物流効率化」のメリットは、工場から出荷された最終製品の「消費地への輸送」にも及ぶ。

西日本の6割、九州の9割を担う九州工場

「関東工場は、関東と言いましても、群馬と茨城の境なので、関西まで“一便”では来られない。九州へ行こうと思ったらもっと遠いんですね。最終製品を運ぶという視点から考えても、九州工場の果たす役割は非常に大きい」

そう山本取締役が言うように、製造能力に限界のある関西工場だけでは九州域内の需要を賄えず、関東工場から輸送している商品もある。

また、水餃子カテゴリーでもシェア1位を続けている「ぷるもち水餃子」シリーズは現状、関東工場でしか製造をしていない。結果、九州で販売されている市販品の約7割が、関東工場から出荷している。

最新の九州工場は、餃子と水餃子の両方の製造を担う計画だ。

2026年12月に完成予定の「九州工場」。九州域内の需要の9割をカバーできる見込み

九州工場の稼働によって、「九州域内での販売の9割くらいは九州工場が担えるようになる予定」(山本取締役)。九州域内であれば、どの拠点でも一便のトラック輸送で済むため、大きな物流コストの削減、効率化につながるというわけだ。

さらに、関西を始めとする西日本エリア全体の需要も九州工場が大きく肩代わりしていく。その割合は、6割ほどになる見込み。ここでも、都城志布志道路の都城IC至近距離という立地が生きてくる。

志布志・宮崎港経由のモーダルシフトを検討

畜産飼料などを運ぶバルク船が多数、出入りする志布志港。トラックの海上輸送も可能な大型カーフェリー「さんふらわあ」が毎日運行しており、大阪港とつないでいる。

志布志港と大阪港を毎日、「さんふらわあ さつま/きりしま」がつないでいる(D-Cat / PIXTA)

イートアンドの九州工場から出荷された商品の輸送ルートとして、このフェリーによる関西への輸送を検討している。さらに、宮崎港から出ている「宮崎カーフェリー」は神戸港とつないでおり、こちらの併用を物流会社のほうでも検討中だ。

都城インター工業団地から都城ICまで数分の距離。都城ICから志布志港までは都城志布志道路が一直線に結んでおり、40分ほどで到着できる。宮崎港までは、宮崎自動車道が一直線に結び、35分ほどの所要時間で済む。

どちらの港も効率的に使える好立地の利。これを活用しないわけがないと、イートアンドは今、本格的な「モーダルシフト」に取り組もうと、物流各社と協議を重ねている。

「モーダルシフト」とは
トラックなどの貨物輸送を、環境負荷の低い鉄道や船舶の利用へ転換する動きや戦略を指す。物流における環境負荷低減への取り組みとして、輸送・配送の共同化や、セントラル倉庫を活用した物流効率化などが挙げられるが、なかでもモーダルシフトは環境負荷の低減効果が大きい取り組みとして産業界や政府内で注目されている。

国土交通省の試算によると、1トン(t)の貨物を1キロメートル(km)輸送する際のCO2排出量は、「トラック=207g」「航空=109g」「船舶=42g」「鉄道=19g」。つまり、トラック輸送から転換することで、船舶は約80%、鉄道は約91%もCO2排出量を削減できる。

昨今では、物流の「2024年問題」に代表されるように、トラックドライバーの負荷・労働時間抑制や、労働力不足などが課題となっているが、モーダルシフトはこうした課題の解決にも役立つとして、産業界で長距離輸送の転換が進んでいる。

九州工場からの商品出荷の具体的な輸送計画はこれから。運送会社のほうでも調整中というが、海上輸送を使う予定であり、「海上がメインとなることを期待している」と山本取締役は明かす。

「関西方面への出荷は、すべては難しいと思いますが、海路で運搬しようと物流会社さんと構想を立てています。逆に関西からもデンプンや油などが九州工場へ入ってくる可能性もありますので、帰り便を使って輸送するなど、メリットを最大限、受けられる工夫をしていきたい」

モーダルシフトは環境負荷の低減という企業の社会的責任に寄与するほか、2024年問題への対策にもなる。

加えると、商品の特性上、物流コストは通常よりも高くつく。冷凍食品のためだ。一般に、冷凍・冷蔵ではないドライ商品に比べて、冷凍輸送のコストは2倍と言われる。燃料費や人件費の高騰が続いており、物流コストは今後もさらに高くなっていくだろう。

九州工場の稼働による総合的な効率化によって、イートアンドではそうした物流費の高騰を吸収できる以上の効果を生むのではないかと期待している。

九州工場の地鎮祭には、イートアンドホールディングスの仲田社長(右奥)のほか、文野直樹 会長(手前)も参加した

最も生産性の高い「高効率工場」へ

「関西エリア向けを関西で作れば安くつきます。ですが、関西は原材料の輸送費や、ゴミの処理費なども高い」と山本取締役。展望について、こう続ける。

「九州工場では、調達、輸送面での改善のほか、機械化、省人化を含めた工場の施設の改善も進めていく。統合的に考えて、生産性の高い高効率工場を作るというのが今のところの構想です」

九州工場の敷地面積は、3つの工場が隣り合う関東工場に比べて4分の1程度と広くはない。しかし、建物を3階建てにしたり、さらなる自動化を導入したりするなどして、効率を極限まで高めていく計画だ。

新たに稼働する九州工場にはまだ余力が残されている

余力も残してある。2026年12月竣工の第一期工事では、全計画の7割程度の建物が完成する。残り3割の計画はまだ未定だが、山本取締役はこう後人に期待を託す。

「いずれ、2つの建物がつながる予定ですが、その時に僕はいないと思います(笑)。僕が勝手に思っているだけですけれども、10年くらい先じゃないですかね。次の世代のひとたちが西日本のハブとして、さらに大きくしてくれると思っています」

「成長への希望のひかり」という意味では、前回記事の児湯食鳥の新工場と同じ立ち位置。都城志布志道路の全線開通が叶わなければ、この希望も生まれなかっただろう。

産業は道を選び、道は産業を呼び込む。都城志布志道路は、高度な競争の舞台装置にもなった。

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