深く多面的に、考える。

進化する畜産王国 #03

“6次化”で成長する観音池ポーク 「都城メンチ」連合艦隊で全国区へ

  • 4農家が集まり年間1万5000頭を出荷する観音池ポーク出荷組合。
  • 餌へのこだわりと、販売と一体の「6次産業化」が成長をけん引。
  • 馬場通社長から息子の康輔氏へと代替わりし、県外での拡販を狙う。

受験生に「メンチカツ」

2025年1月、「都城メンチ協議会」は高城中学校などを訪れ、受験生にメンチカツをふるまった(提供:観音池ポーク)

2025(令和7)年1月10日、「都城メンチ協議会」の会長を務める馬場康輔氏(43歳)は、自身も通った高城中学校を久しぶりに訪れた。高校受験を控えた約90人の3年生に、「受験に勝ってほしい」という思いを込め、メンチカツを贈呈するためだ。

日本一の肉のまち、都城。肉用牛と豚の出荷額は全国1位を誇り、余った部位を有効活用した加工品などの惣菜も発展。メンチカツはその一つで、長らく地元で愛されてきた。

都城市の農業産出額(2022年)

その「都城メンチ」を全国区に広げようと2023(令和5)年、官民連携の都城メンチ協議会が発足し、PR活動に力を入れてきた。その活動の一貫で、中学校をまわり、受験生にメンチカツを提供している。

協議会のトップを務める康輔氏は、都城メンチを代表として売り込む立場であると同時に、メンチカツの「製造元」の一社であり、その素材となる豚の「生産者」でもある。

都城の養豚業として「6次産業化(6次化)」で先頭を走る「観音池ポーク」グループ。その成長の立役者で、グループの将来も担う康輔氏は、こう言う。

都城メンチ協議会の会長を務める馬場康輔氏。2025年3月、有限会社 観音池ポークの社長に就く

「これまでの10年間は、9対1くらいの割合で、思いっきり生産に打ち込んで来ましたが、ほぼやりたいことが達成できた。これからはサービス・販売のほうに集中したい。そうしなければいけないと思います」

「6次産業化(6次化)」とは
1次産業としての農林漁業と、加⼯などの2次産業。さらにサービスや販売などの3次産業まで含め、⼀体化した産業として推進する取り組みのこと。地域資源を活用した新たな付加価値を生み出し、農林漁業の可能性を広げる狙いがある。

農業経済学者でもある東京大学の今村奈良臣名誉教授が提唱し、「1+2+3=6」になることから、6次産業化と名付けられた。2010(平成22)年には「地域資源を活⽤した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林⽔産物の利⽤促進に関する法律(六次産業化・地産地消法)」が交付。2011(平成23)年3月から施行され、国も6次化の推進を後押ししている。

康輔氏は2025年3月、観音池ポークグループで6次化の中流と下流、農産加工・販売を担う会社の新社長に就任する。

1990(平成2)年の「観音池ポーク研究会」設立から35年。観音池ポークは新たなフェーズに入った。

生産部門と販売部門の一体経営

観音池ポークグループは、生産(一次産業)の「観音池ポーク出荷組合(以降、出荷組合)」と、加工(2次)・販売(3次)の有限会社 観音池ポーク(以降、観音池ポーク)で構成される。

出荷組合は、近隣する3農家が集まった「農事組合法人 萩原養豚生産組合」と「上村養豚場」で構成され、今や前者が年間約1万3000頭、後者が年間約2000頭、計1万5000頭を出荷するまでに成長した。

上は観音池ポーク出荷組合のメインとなる萩原養豚生産組合の肥育農場。下はそのメンバー(提供:観音池ポーク)

そのうち、年間約1300頭を観音池ポークが買い取り、メンチカツなどの惣菜や精肉を直売店やネット通販を通じて小売りしている。出荷組合4農場の代表が販売部門である観音池ポークの取締役も兼ね、グループとして「一体」を成す。

観音池ポークでの取り扱いは、出荷組合が出荷する総量の1割にも満たない。だが、生産と販売、一体となって取り組む6次化を実践する成長の源泉であり、ブランディングやマーケティングにおいても、その比率以上の役割を果たしてきた。

当初から出荷組合で銘柄豚(ブランドポーク)の開発と生産をリードし、観音池ポークでも社長として6次化を推進してきた馬場通氏(71歳)はこう話す。

生産者として観音池ポークブランドの立ち上げに尽力した馬場通氏。2025年2月まで販売部門である観音池ポークの代表取締役も務めた

「直売店の開設から24年が経って、だんだんとですね、少しずつ、口コミなどが広がって知名度も上がっていった。最初のスタートは2800万円くらいだった(販売部門の)売り上げも今は2億円を超えました。始めた頃に比べたら大きくなったなと思います」

都城を代表するブランドポークへと成長した観音池ポーク。寄附金額で5回の日本一を誇る都城市の「ふるさと納税」でも人気の返礼品となっており、出荷頭数や直売店での売上高以上の存在感を放つ。

その背景には、そもそもの豚の品質を向上させてきた不断の努力がある。

「日本トップクラス」を支える餌

「私はあとから入った人間ですが、第三者的な見方でも、豚を作るのは超一流です。表彰も何度も受けていますし、肉質はもう日本の中でもトップクラス。3本の指には入っとると思っています」

こう胸を張るのは、長らく都城市役所に務め、観音池ポークに惚れ込んで2018(平成30)年、観音池ポークに“転職”した柚木崎誠統括マネージャー(66歳)。生産部門の受賞歴は輝かしい。

観音池ポーク生産部門の主な受賞歴
2017年 「第60回 宮崎県畜産共進会(肉豚枝肉の部)」にて、観音池ポーク出荷組合内の(農)萩原養豚生産組合がグランドチャンピオンとなる最高ランクの優等1席を獲得
2018年 「第10回 宮崎県肉畜共進会(肉豚枝肉の部)」にて、(農)萩原養豚生産組合が優等1席を獲得
2019年 「第48回 日本農業賞(集団組織の部)」にて、観音池ポーク出荷組合が優秀賞を受賞
2021年 「令和3年度 全国優良畜産経営管理技術発表会」にて、(農)萩原養豚生産組合が最優秀賞となる農林水産大臣賞を受賞
出所:観音池ポーク

なぜ、観音池ポークは高評価を得るのか。その問いに、新社長となる康輔氏は「餌ですね」と即答した。

餌へのこだわりは、木炭から作られる自然由来の飼料「ネッカリッチ」の導入が始まり。遡ること35年前の1990年、康輔氏の父親である通氏は、近隣の養豚農家と共同でブランドポークの開発を目指した。通氏は当時をこう振り返る。

「銘柄豚を作ろうってなった時に、お隣の鹿児島には薩摩の黒豚があって、こちらは白豚系で。差別化を図るのがなかなか難しいと思っていた時、『ネッカリッチ』という餌が宮崎県で作られていることを知って。宮崎大学の先生にもいろいろなことを教えていただいて、銘柄づくりが始まったんです」

観音池ポークのブランドづくりの起点となった混合飼料「ネッカリッチ」(提供:観音池ポーク)

ネッカリッチは、広葉樹の樹皮から精製された炭と木酢液を配合した混合飼料。天然の有機成分やミネラルが豊富に含まれる。腸内の善玉菌を増やす効果があるとされ、匂いが改善されることから、鶏や乳牛、養殖の魚やウナギなどへの採用が広がっていた。

コストは多少、高くなるため、一般の農家には普及していなかったが、宮崎大学との共同研究で、豚に与えると特有の臭みが減ることに加え、病気やストレスへの抵抗力も高まり、肉質も改善されることがわかった。

「いいものを作ろう」と考えた通氏は導入を決め、1991(平成3年)年、ネッカリッチで育った豚肉を大阪のスーパーへ初出荷した。評判は良く、出荷頭数は年間3000頭以上まで拡大。1998(平成10)年、出荷組合が組織化され、さらなる品質改善に取り組んだ。

「笹サイレージ」を与えた2代目

出荷組合は早くから地球環境への負荷削減も意識。2005(平成17)年からは、宮崎県畜産試験場や宮崎大学農学部と連携し、食品工場などから出る「パンくず」を主体としたリサイクル飼料「エコフィード」の給与も始めた。

「パンくず」などを原料とするリサイクル飼料「エコフィード」(提供:観音池ポーク)

通氏の息子、康輔氏が養豚に携わるようになってからの2017(平成29)年に導入された餌が「笹サイレージ」である。これを康輔氏に紹介したのが、当時、市役所の畜産課にいた前出の柚木崎マネージャーだった。

「『笹サイレージ』は、都城市の企業と県の畜産試験場が牛用に開発した技術。放置竹林の竹を伐採して、茎と葉っぱすべてを粉砕して乳酸発酵して牛にやったら、非常に良かったと。観音池ポークは先進的でしたから、ご紹介したわけです」

観音池ポークの柚木崎誠統括マネージャー。都城市役所の畜産課から同社へ転じた

ちょうど、食物繊維が豊富な新たな餌を探し始めていた康輔氏。試しに笹サイレージを豚に与えたところ、2%配合した餌を与えた豚舎だけ、明らかに臭いが減った。竹の粉末を発酵させた笹サイレージは、乳酸菌と食物繊維が豊富。消費者からは「おいしい」「脂が甘い」といった声も届いた。

笹サイレージの効能は肉質以外にも及ぶ。放置竹林は倒壊や土砂崩れを引き起こすリスクがあり、その伐採は地域の安全にもつながる。伐採した原料の竹は基本、無料なので、コストもさほど高くはない。また、豚の腸内環境が改善され、目標体重に至るまでの日数が5〜15日程度短縮されるため、その分、飼料代などのコストも浮く。

竹を粉砕し、乳酸発酵させて飼料化した「笹サイレージ」(提供:観音池ポーク)

なぜ、ほかの養豚農家にも広がらないのか。聞くと、「農家の皆さん、新しいことをするのは、わりと躊躇するっていうか。今までのやり方をあまり変えたくないっていうのは、みんなそうです」と康輔氏。

そんななか、なんとか付加価値をつけようと出荷組合は試行錯誤を重ねた。その積み重ねが、県共進会における「グランドチャンピオン2連覇」などの高評価にもつながり、地域や消費者にも認められるブランドへと育っていったのだ。

一方で、同時進行で進んだ「6次化への取り組み」も、ブランドの名声を高める大きな要素となった。これも、よそがやらなかった時代から始めた挑戦である。

野菜たっぷりの“お袋メンチ”

観音池ポークの6次化の歴史は、2001年の直売店設立に端を発する。

国道10号沿いに建つ観音池ポークの本店。直売店の1号店であり、6次化の起点でもある

餌で付加価値をつけた観音池ポークが大阪を中心に売れ始めると、「地元で買えない」という声が聞こえ始めた。そこで、「地元のひとにも味わってほしい」という思いから、通氏を中心に加工・販売を手がける有限会社 とんとん百姓村が立ち上がった。初の直売店は、「観音池公園」近くの国道10号線沿いに設けられた。

出荷組合が生産した豚肉を、自らのグループで1頭買い。車で20分ほどの場所にある屠(と)畜場から運ばれてきた新鮮な豚肉を部位ごとにスライスし、精肉の提供を始めた。ところが、新たな課題が持ち上がったと通氏は話す。

「うちが生産組合から一頭、まとめて買うわけです。そうなった時に、ロースとかバラとかヒレとか、そういった部位の需要は多いんだけども、どうしてもウデ・モモが余ってきて。そこをどうしようかというのがきっかけで、惣菜を始めたんです」

2004(平成16)年から加工品の開発に着手。オリジナルのメンチカツを看板に、翌2005(平成17)年1月から、加工品や惣菜の販売を開始した。

直売店では、メンチカツを始めとする揚げたての惣菜が売り上げを伸ばした

通氏いわく、観音池ポークのメンチカツは「キャベツと玉ねぎが肉と同じくらい入っていて、野菜嫌いの子どもさんでもよろこぶような“お袋メンチ”っていう感じ」。ジューシーながら、さっぱりといただける自信作に仕上がった。レシピは今に至るまで変わらない。

ただ、一筋縄ではいかなかったと通氏は振り返る。

「始めた時は、本当に売れなくて。1年後ぐらいでしょうか、地元のケーブルテレビ(BTV)が取材に飛び込んできて、おいしいって言ってもらえて。それからですね。徐々にだんだんと普及していったような感じです」

最新鋭の「急速冷凍機」導入

野菜たっぷりのメンチとともに、販売部門としての観音池ポークは右肩上がりに成長。2011年(平成23)年3月施行の通称「六次産業化・地産地消法」も背中を押した。

農林漁業の6次化を後押ししようと本腰を入れた政府。農林水産省から事業者の「総合化事業計画」が認定されると、農業改良資金(無利子資金)の特例通用や各種補助金の対象となるなど、さまざまな恩恵が受けられるようになった。

2012(平成24)年、法整備に先んじて6次化に突き進んでいた観音池ポークグループの事業計画も認定され、6次化を加速させた。

本社事務所には農林水産省からの「総合化事業計画」認定書が掲げられていた

武器の一つが、当時、最新鋭の「急速冷凍機」だ。磁石と電磁波に冷風を融合させた「プロトン凍結」という方式で、冷凍による劣化を極限まで抑えることができる。新たな技術や素材への研究意欲は、餌に続いてここでも発揮された。通氏は言う。

「急速冷凍機は、まだこっちで普及してなかったから、鹿児島や福岡に行ったり、宮崎県食品開発センターに行ったりして、冷凍技術の勉強をさせてもらったんですね。いろいろと試験をしてみて、うちも入れようと。けっこうな値段がしたんですけれど、でもやってよかったなと思います」

現在では、メンチカツなど惣菜の鮮度や風味、食感を維持できる「プロトン凍結機(上)」2台と、生肉の品質を保てるリキッドタイプの凍結機(下)を使いわけている(提供:観音池ポーク)

メンチカツも、店内調理や持ち帰り用に急速冷凍した。解凍しても揚げたての風味を再現できるとあって、好評に拍車をかけた。その勢いは、規模拡大へとつながる。

2016(平成28)年、(農)萩原養豚生産組合の組織再編に着手。繁殖部門と肥育部門を別々に設ける「2サイト」方式を導入し、飼養頭数を増やしたうえで防疫も強化した。

販売部門では同年に「三股店」を、2019(平成31)年に「南横市店」をオープンさせ、3店舗体制に。メンチカツ人気が惣菜の販売をけん引し、2022年頃には直売店における惣菜関連の売り上げが精肉を逆転した。

厨房ではフル稼働でメンチカツなどの惣菜が揚がっていく

「年間1200頭とか1300頭とかの量を自社で消化できるようになった。それは、やっぱりメンチカツっていう商材があったからです」と通氏。今や、観音池ポークが販売するメンチカツは年間40万個におよび、介護食向けなど新たな需要にも対応し始めた。

近年は直販サイトやふるさと納税などの販路も開拓している(「楽天ふるさと納税」の販売ページより)

直売店だけではなく、自社のネット通販や、ふるさと納税の返礼品といった新たな販路も開拓しつつある。冒頭で紹介した都城メンチの取り組みも追い風となったと通氏は言う。

「都城メンチの協議会ができてから、やっぱりまた伸びたんですね。点じゃなくて面として、みんなで、連合艦隊で都城を盛り上げようっていう目的ですから」

「都城だけではもう飽和になってくるやろうけど、まだ(県外などに)広がっていくんじゃないかなっていう思いでやっております」

通氏はそう今後にも期待を寄せる。根底に流れるのは「共存共栄」の精神である。

共存共栄がブランドを発展

販売部門の観音池ポークとしては、じつはネット経由の全国への拡販は後手に回っている。ふるさと納税にも「観音池ポーク」ブランドを関した返礼品はたくさん並ぶが、出荷組合が卸した先の加工会社などによる商品が多い。

前述のように、出荷組合による年間1万5000頭のうち、観音池ポークが扱うのは1300頭ほど。9割以上は、大手卸のミヤチクなどを介して出荷され、その先の加工会社などが先にふるさと納税で観音池ポークブランドを展開し始めた。

直営としての観音池ポークは、「“二番煎じ”になってしまっていて、まだ量としては少ないんです」と柚木崎マネージャーは吐露する。

通氏は「商売がうまくないということでしょうかね」と笑って言うが、観音池ポークに関わる皆、いわば「観音池ポーク経済圏」の全体が共存共栄し、ブランドとして発展することを願ってきた結果でもある。

2014(平成26)年、都城市のふるさと納税がリニューアルし、「肉と焼酎」を大々的に打ち出して以降、しばらく観音池ポーク自体は「自分たちが(ふるさと納税に)参入することに戸惑った時期があった。遠慮した」(通氏)。

出荷組合が豚肉を納めた先の加工会社などの商売を優先し、バッティングを避けた。加工会社による観音池ポーク関連の返礼品が売れても、ライセンス料などが入るわけではなく、販売部門の成長にはつながらない。

「人がいいというか、自社の利益を優先しないんですね」と水を向けると、通氏は「うん。そういったことがあるから、今があるんじゃないでしょうかね」と言った。

ブランドをともに育ててくれた地域の仲間の存在があるからこそ、そう思える。

「メンチカツじゃなく、都城を売る」

もう10年以上前、JR宮崎駅から車で30分ほど海岸線を南下した場所にある観光スポットの「青島」を通氏が訪れた時のこと。なにげなく立ち寄ったスーパーの売り場で、「観音池ポーク」と表示された商品を目にした。

自分たちは関与していない。出荷組合から卸された肉が、加工食品の企画販売などを手がける「ばあちゃん本舗」に渡り、同社の小園秀和社長が宮崎市や県南などのスーパーをまわって、置いてもらっていることを知った。

「本当、自分たちができない部分を小園くんたちが一生懸命、頑張ってやってくれていた。なんぼPRしても、手に入らなければ食べる機会はない。観音池ポークっていうブランドが広がったのは、うちだけの力じゃなくてそういった周りの協力があってのことです」

通氏はそう感謝を口にする。その経験があるからこそ、観音池ポーク、都城メンチという2つのブランドを引っ提げ、「連合艦隊」で全国へ打って出ているというわけだ。

ほかの加工会社などが販売する観音池ポークブランドの精肉や加工品がどれだけ売れようが、販売部門の収益には直結しないが、出荷組合が卸した肉であることに変わりはなく、観音池ポークというブランドを広めてくれる「応援団」であることに違いはない。

観音池ポークの次なる進化は、2025年3月に代替わりし、販売部門である観音池ポークの社長となる息子の康輔氏に託された。

「課題は見えていて、間違いなく利益率。惣菜が伸びているってことは、おそらく主婦の方って忙しいんですよね。で、インフレも起きて、給料も上がらないってなった時に、この都城で育ててもらったっていうのもあって、地域の家庭を助ける商品と、この会社が助かるための商品を分けなければいけないと思っています」

「後者は県外に向けて、しっかりと利益を確保する。そのためには、まず名前を売ることですよね。だから、会長をやらせてもらっているメンチカツ協議会もメンチカツを売るんじゃなく、都城を売ることを目標にしている。じゃないと多分、県外へは出ていけません」

通氏の「思い」も継ぐ康輔氏は、今後の展開について力強くこう語った。その言葉はどこか、池田宜永市長が就任以来打ち出している「対外的PR戦略」の思想とも重なる。

モノではなく名を全国に売る――。2代目の新たな挑戦が始まろうとしている。

  • 筆者
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井上 理(いのうえ・おさむ)

フリーランス記者・編集者/Renews代表。1999年慶應義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。「日経ビジネス」編集部などを経て、2010年日本経済新聞に出向。2018年4月日経BPを退職。フリーランス記者として独立し、Renews設立。著書に『任天堂 “驚き”を生む方程式(日本経済出版社)』『BUZZ革命(文藝春秋)』。

  1. 全国最高賞の和牛を育てる挑戦 「全共」へかける薬師憲一氏の思い

  2. “6次化”で成長する観音池ポーク 「都城メンチ」連合艦隊で全国区へ

  3. 子牛市場を救うランズの代理母 繁殖支える内田畜産の「希望」

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