深く多面的に、考える。

ふるさと納税日本一の舞台裏 #01

「ふるさと納税日本一」だけでは測れない実力 都城市8年連続トップ10の偉業

このテーマでは「ふるさと納税の舞台裏」を追うことで、都城をより深く知っていきます。導入編となるテーマ初回は、これまでの歩みを簡単に振り返りながら、ふるさと納税における「都城の強さ」を改めて理解していきます。

2021年度の寄附額は全国2位

「ところで、先般、総務省から『令和3(2021)年度のふるさと納税に関する現況調査結果』が公表され、本市は受入額で全国第2位となりました」

職員に語りかける池田宜永市長

今年8月3日、宮崎県都城市の池田宜永(たかひさ)市長は、自ら職員向けに語りかける月初の庁内放送で、こう切り出した。

都城市は2020年(令和2年)度、ふるさと納税受入額(寄附額)で3度目の日本一に返り咲いたものの、21年度は惜しくも2位となったことを伝える池田市長。だが、その声に悔しさはない。

「平成26(2014)年10月に大幅リニューアルしてスタートした本市のふるさと納税は、リニューアル後8年連続で寄附額を伸ばしており、リニューアル前の平均寄附額と比較すると、約288倍となっております」

まるで、気鋭のベンチャー企業のように伸び続けている寄附額。都城市が日本一になったことを知る市民は多いが、8年連続で増収を続けていることを知る人は少ないかもしれない。

過去8年の全国寄附額ランキングすべてにおいて「トップ10」に入っていることも。

狙いは地方と都会の「格差是正」

「ふるさと納税制度」は、地方の人口減に伴う税収減少や、地方と都市部の格差是正といった課題の解決を目的とし、2008(平成20)年4月に地方税法等が改正され、同年5月からスタートした。

多くの人が、地方のふるさとで生まれ、その自治体でさまざまな住民サービスを享受して育ち、進学や就職を機に都会へ移住。都会の自治体に税金を収め、育った自治体には税収が入らないというのは、どうなのか――。

政府の「ふるさと納税研究会」で問題提起がなされ、自分の意思で都会に支払う税金の一部をふるさとに収める制度として、ふるさと納税制度が創設された。

ふるさと納税制度とは
住民票のある自治体に支払う税金の一部を特定の“ふるさと”に収める制度。「納税」という言葉がついているが、実際には都道府県、あるいは市区町村への「寄附」扱いとなる。一般に、自治体に寄附をした際は確定申告を行い、その寄附金額の一部が所得税及び住民税から控除されるが、ふるさと納税では原則、自己負担額の2000円を除く全額が控除の対象となる。また、生まれ故郷に限らずどの自治体にでも寄附を行うことができるほか、寄附金の使い道を選択できる自治体もある。

今でこそ、ほとんどの人が知る有名な制度となったが、開始当初は伸び悩み、開始から7年目となる2014年度から市場全体が大きく立ち上がっていく。同時に、都城市の快進撃も始まった。

都城市のふるさと納税受入額(寄附額)の推移

出所:総務省。金額は四捨五入

2013(平成25)年度まで3桁台だった順位は突如、14年度に「9位」へ大きくジャンプアップ。以降、2021年度までの8年間、都城市はずっと全国トップ10を維持し続けている。

これは、どれほどのことなのだろうか。相対的な比較なくして、その価値はわからない。

6割超が1回のランクイン

というわけで、総務省が公開しているデータから、過去8年分の寄附額上位10自治体を抜き出し、トップ10ランキングを並べてみた。

ふるさと納税受入額の全国ランキング(2014〜21年度)
順位 2014年
(平成26年)度
億円 2015年
(平成27年)度
億円
1位 長崎県平戸市 14.6 宮崎県都城市 42.3
2位 佐賀県玄海町 10.7 静岡県焼津市 38.3
3位 北海道上士幌町 9.6 山形県天童市 32.3
4位 宮崎県綾町 9.4 鹿児島県大崎町 27.2
5位 山形県天童市 7.8 岡山県備前市 27.2
6位 島根県浜田市 7.3 長崎県佐世保市 26.5
7位 長野県飯山市 6.3 長崎県平戸市 26.0
8位 佐賀県小城市 5.1 長野県伊那市 25.8
9位 宮崎県都城市 5.0 佐賀県上峰町 21.3
10位 鳥取県米子市 4.8 島根県浜田市 20.9
  全国 389 全国 1653
順位 2016年
(平成28年)度
億円 2017年
(平成29年)度
億円
1位 宮崎県都城市 73.3 大阪府泉佐野市 135.3
2位 長野県伊那市 72.0 宮崎県都農町 79.1
3位 静岡県焼津市 51.2 宮崎県都城市 74.7
4位 宮崎県都農町 50.1 佐賀県みやき町 72.2
5位 佐賀県上峰町 45.7 佐賀県上峰町 66.7
6位 熊本県熊本市 36.9 和歌山県湯浅町 49.5
7位 山形県米沢市 35.3 佐賀県唐津市 43.9
8位 大阪府泉佐野市 34.8 北海道根室市 39.7
9位 山形県天童市 33.6 高知県奈半利町 39.1
10位 北海道根室市 33.1 静岡県藤枝市 37.1
  全国 2844 全国 3653
順位 2018年
(平成30年)度
億円 2019年
(令和元年)度
億円
1位 大阪府泉佐野市 497.5 大阪府泉佐野市 185.0
2位 静岡県小山町 250.6 宮崎県都城市 106.5
3位 和歌山県高野町 196.4 北海道紋別市 77.4
4位 佐賀県みやき町 168.3 北海道白糠町 67.3
5位 宮崎県都農町 96.3 北海道根室市 65.9
6位 宮崎県都城市 95.6 宮崎県都農町 52.1
7位 大阪府熊取町 76.4 佐賀県上峰町 46.7
8位 茨城県境町 60.8 鹿児島県南さつま市 46.4
9位 北海道森町 59.1 山形県寒河江市 44.2
10位 佐賀県上峰町 53.2 新潟県燕市 42.4
  全国 5127 全国 4875
順位 2020年
(平成2年)度
億円 2021年
(令和3年)度
億円
1位 宮崎県都城市 135.3 北海道紋別市 153.0
2位 北海道紋別市 133.9 宮崎県都城市 146.2
3位 北海道根室市 125.5 北海道根室市 146.0
4位 北海道白糠町 97.4 北海道白糠町 125.2
5位 宮崎県都農町 82.7 大阪府泉佐野市 113.5
6位 山梨県富士吉田市 58.3 宮崎県都農町 109.5
7位 山形県寒河江市 56.8 兵庫県洲本市 78.4
8位 兵庫県洲本市 54.0 福井県敦賀市 77.2
9位 兵庫県加西市 53.4 山梨県富士吉田市 72.1
10位 静岡県焼津市 52.2 福岡県飯塚市 65.6
  全国 6725 全国 8302
注:出所は総務省、各数字は四捨五入

まず、過去8年すべてでランクインを果たした自治体は、都城市以外に存在しない。トップ10圏内で8年連続増収を果たした自治体も都城市だけだ。

次に、ランクインの回数を見ていこう。次点は6回の宮崎県都農町。5回ランクインが3自治体、3回ランクインが4自治体、2回ランクインが7自治体と続く。そして、過去8年でトップ10にランクインした自治体は41あるが、うち6割超にあたる25自治体が1回のランクインにとどまっている。

ちなみに、トップ10に入れるのは、全国に1700以上ある自治体(都道府県・市区町村)のわずか0.6%以下。1回ランクインするだけでも大変なことだ。

こうした“競争環境”を考えると、8年すべてにランクインし続けたうえ、輪をかけて連続増収を記録した都城市がいかに突出した存在かがわかる。しかも、競争環境が変化するなかで、都城市はその強さを維持し続けた。

過熱する市場を冷ました総務省

前出の表の最下部、全国の合計寄附額に着目すると、急成長していた「ふるさと納税市場」が2019(令和元)年度、わずかに前年度を下回り、踊り場となっていることに気づく。これは、過熱する市場を冷ますかのように総務省が動いた結果だ。

年々、寄附額が肥大化するなかで、各自治体同士のパイの奪い合いも激しさを増し、ギフト券など、地場にあまり関係のない換金性の高い返礼品などで勝負する自治体も出てきた。

そうした返礼品は、「ふるさと納税の本来の趣旨に反する」として、総務省は「返礼品の調達額は寄附金額の3割以下」「地場産品に限る」などと通知を繰り返したが、過熱ぶりは収まらない。そのため総務省は法改正したうえで、以下のルールの義務化へと踏み切った。

  • 返礼品は地場産品に限る
  • 返礼品の調達額を寄附金額の3割以下とする
  • 寄附金の募集を適正に実施すること

新制度は2019年6月から。同時に、新制度開始前に駆け込みで寄附金をかき集めようと、大胆なキャンペーンを打ち出す自治体も登場。総務省も対抗し、新制度開始の直前、19年5月に4自治体をふるさと納税から「除外」する決定を下した。

地場産品以外で勝負する自治体も

この件については、いろいろな見方があることに留意しなければならない。

除外された自治体にも言い分はある。例えば、地場産品だけで勝負することについて、もともと魅力のある地場産品がない自治体からすれば、備わっていた産業や自然環境、各種資源によってふるさと納税の寄附金が決まってしまう、という不平の声も出ていた。

その後、この自治体と総務省とのやり取りは裁判にまで発展することになったが、最終的に除外された自治体はふるさと納税制度に復活していった。

新制度開始後も総務省は、新たに3自治体に対して、ルールに則らなかったとして向こう2年間、制度から除外する「指定取り消し処分」を下すなど、強硬な姿勢を崩していない。

自治体と総務省との軋轢を説明したいわけではない。こうした、総務省から「ルールを逸脱している」と指摘された自治体は、得てして多くの寄附金を集める人気自治体であり、トップ10にランクインすることも多かった。

対して、都城市の返礼品に対し総務省から「指定取り消し処分」を警告されたことはない。

都城市は当初から、地場の「肉と焼酎」を武器に戦ってきた。裏を返せば、それだけ地場産品の「商品力」が高いことを物語っていると言える。

日本一の肉と日本一の焼酎

「ふるさとチョイス」「さとふる」「ふるなび」「楽天ふるさと納税」……。全国のふるさと納税の返礼品を扱う大手サイトで都城市のページを覗くと、これでもかというくらい肉の写真が飛び込んでくる。次いで多いのが焼酎だ。

「楽天ふるさと納税」の都城市のページ

返礼品の人気ランキングでも、肉と焼酎は強い。そのはず、ふるさと納税に限らず、それぞれ「日本一」の出荷量を誇る人気の地場産品なのだ。

都城市は、市町村別の農業産出額において全国1位。農林水産省が公表している推計値によると、2020年の農業産出額は865億円となり、前の年から若干減ったものの2年連続で日本一となった。中でも圧倒的な存在感があるのが肉である。

都城市の農業産出額のうち、畜産部門が占める割合は全体の8割以上で全国1位。内訳を見ると、「豚」が284億円、「肉用牛」が187億円でいずれも全国1位。ブロイラーと鶏卵の「鶏」も208億円で全国2位だった。

他方、焼酎も、宮崎県は2014年から出荷量1位を記録し続けている。この大記録に大きく貢献しているのが、都城市を本拠地とする霧島酒造。「黒霧島」「赤霧島」で知られる同社は、焼酎メーカーの売上高ランキングで10年連続1位を堅持し続けている。

「都城市ふるさと納税特設サイト」でもそれぞれの日本一をアピール

これらの地場産品が、都城市のふるさと納税の原動力となっていることは間違いない。ただし、それだけで過去8年間の都城市の強さを説明することはできない。

前述のように、当初は3桁台のランキングに甘んじていた都城市だったが、突如、2014年にトップ10入りした。その躍進の理由を、「地場に備わっていた商品力」だけに求めるのは無理がある。なぜなら、ふるさと納税制度が始まった2008年の当時、つまりふるさと納税制度で都城市が相対的に弱かった時代でも、畜産と焼酎産業は強かったからだ。

都城市の肉と焼酎が、なぜふるさと納税という舞台で急に脚光を浴びることとなったのか。いったい2014年以降、なにがあったのか――。

地場産品の魅力プラスアルファの要素がなければ、2014年度の大躍進や、過去8年間の偉業は成し得なかった。次回以降、背景にある知られざるストーリーや、返礼品を提供する地元事業者の尽力などを通じて、さらに深く都城を見つめていく。

次回に続く)

都城市ふるさと納税大躍進のなぜ[前編] 起点となった「対外的PR戦略」

  • 筆者
  • 筆者の新着記事
井上 理(いのうえ・おさむ)

フリーランス記者・編集者/Renews代表。1999年慶應義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。「日経ビジネス」編集部などを経て、2010年日本経済新聞に出向。2018年4月日経BPを退職。フリーランス記者として独立し、Renews設立。著書に『任天堂 “驚き”を生む方程式(日本経済出版社)』『BUZZ革命(文藝春秋)』。

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